~誓い~
 
 
 
 
 
 
 
 
『お前よう頑張ったな』
キャプテンが泣きながら
俺を抱き締めた。
他の部員も俺に
声をかけてくれる。
初めてそのとき
「最後まで頑張って良かった」
と感じた。
 
 
 
もう俺の中の溝は
綺麗になくなっていた。
思いっきり笑った。
 
 
そして地元に
帰ってきて真っ先に
彼女の家にいった。
彼女の母親に
甲子園の砂を渡すと
 
 
『お疲れさま』
 
 
といって
彼女のところに通された
彼女の笑った写真があった。
 
 
前に座って
俺もにっこり笑ってやった。
 
 
そして彼女が初めて俺の前で
泣いた時を思い出した。
病院で急に死ぬかもしれん
と泣き付いた。
 
 
死ぬのが怖い、
俺と離れるのが怖い、
自分が死んで俺が
他の娘を好きになるのが怖い。
 
 
…それなのに何も出来なくて
彼女が苦しんでるのに
呑気に野球やってる
自分が嫌になった。
でも彼女は今は
そこで笑ってる。
彼女は笑ってる
俺が好きだからもう泣かない。
そう決めたのに胸が苦しくなった。
 
 
『泣いてええんやで…』
 
 
やさしい声がした。
彼女とよく似ている声。
背中にそっと
手を置いた彼女の母親が
 
 
 
『よう頑張りました!!
辛いことぎょうさん
抱え込んで苦しかったやろ。
もう我慢することないんやで…』
 
 
 
やっぱり泣いてしまった。
あの時彼女に、
 
 
「俺はお前以外
誰も好きにならん。
余計な心配せんでええんや」
 
 
と言ったことを思い出した。
必死に彼女の死を
さけようとした。
でも彼女は必死で
一生懸命生きていた。
 
 
強かった彼女をもっと
誉めてやればよかった。
彼女は笑ってる。
大好きだった彼女、
ちゃんと俺の背中に乗って
甲子園についてきて
くれたんやろか。
 
 
 
彼女の写真たてに
俺達の甲子園の切符である
メダルをかけてやった。
 
 
 
「俺は大学いって
プロめざすけん。
そしたらまた今度は俺が
甲子園に連れてってやるからな!!
何回でもつれてってやる。
約束や」
 
 
 
彼女は笑ってくれた。
わかったよと
言っているように…