~最高の仲間たち~
1回戦、とうとうやってきた
全国制覇の通過地点。
太陽がじりじり暑かった。
グランドを踏みしめて
彼女のお守りを握り締めた。
帽子の中に彼女の写真をいれた
仲間は笑っていた。
スタンドを見つめると
俺の両親がいて、
隣に彼女の両親もいた。
椅子には彼女の
写真がおいてあった。
俺はじっとそれを見て
深く一礼した。
すると後ろで
『気をつけっ!!礼!!』
とキャプテンが叫んだ。
ベンチの皆が俺が一礼した方向に
頭を下げてくれた。
キャプテンは俺を見て笑った。
仲間もみんな笑ってくれた。
その時俺のなかで、
こいつらとずっと
ずっと野球やりたい。
一緒に戦いたい
と心の糸がすっきり
解けたような感じがした。
初めて甲子園にきたこと、
野球が出来ていることを
身に感じた瞬間だった。
試合開始のサイレンが鳴る。
守備について帽子の裏の
彼女の写真を見つめた。
俺の背中に乗ってろよ、
と話し掛けた。
試合は点の取り合いになった。
5回にホームランが入り同点…
負けたくない。
7回に俺の打順が回ってきた。
ピッチャーは俺の嫌いな
タイプの球を投げる…
どうしても打ちたかった。
だけどゴロになって
ランナーを進めず
試合は相手の1点リードのまま
9回裏の攻撃に入った。
キャプテンがヒットを
出して1塁に進んだ。
次のバッターは送りバントして
1アウト2塁。
だが次のバッターが
空振りをして2アウト2塁。
そして…
俺の番が回った。
不安で仕方がない。
涙が出てきそうだった。
バッターボックスに向かう途中
後ろを振り替えった
『泣いてたら
球がみえんやろ!!!
泣くな!!お前なら出来る!!!』
監督の声が響いた。
キャプテンが2塁から叫んだ
『お前が返せよっ!!』と。
俺は涙を吹いて
バッターボックスにたった。
彼女に
「助けてくれ」といって…。
第一球目、
俺は思いっきり振った。
球はライト線にとんだ。
誰もがヒットだと思った。
ライトが走って飛び付いてきた。
……大きな歓声が上がる。
俺達の夏が終わった。