~彼女の死~
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は予想もしてなかった。
あの時が彼女との
最後になってしまった事を…
 
 
その日その時、
彼女の容体が急変したこと…
 
 
試合は互いに点を取り合い
俺達が1点リードの
9回の表を向かえた。
俺たちは絶対に
負けるわけには行かない
 
 
相手の攻撃、
バッターは3番。
ピッチャーがだんだん乱れてきた。
 
 
フォアボール
死球が続き2アウト
ランナー1、3塁。
 
 
バッターは今日
ホームランを出した5番。
 
外野の俺は後ろに下がった。
物凄く恐かった。
自分が一人に思えた。
 
 
ホームラン
きたらどうしよう… 
 
 
俺は後ろのポケットに
いれたお守りを握った。
汗を拭って深呼吸して
彼女のいったあの
言葉を思い出した。
 
 
『仲間がちゃんとついとる。
大丈夫』
 
 
そしてバッターが思いっきり
フルスイングして
飛んできた方向は俺だった
 
 
 
ホームランになってしまう!!
無我夢中で俺は走った。
届け!!間に合え!!
走って走って走って…
 
 
 
ガシャンとフェンスに
よじ登った……
 
 
 
 
観衆の声が沸き上がる。
 
 
 
 
…俺のグローブには
ボールがしっかり
にぎられていた。
 
 
 
「やった!!」
俺が押さえた!!
試合終了のサイレンがなった。
仲間は泣いて
俺に抱きついてきた。
 
 
 
最後の夏…
俺たちは甲子園の
切符を手にした。
 
 
メンバー1人ひとりに
メダルが渡される瞬間、
彼女を思い出した。
見ててくれとるやろか。
甲子園行けるで。
 
 
でも束の間だった。
同じクラスの女子らが
球場の窓口から出てくるの
待ってたかのように寄ってきた
 
 
 
「あんたの彼女…」
 
 
 
観衆の声が
邪魔して聞こえにくい
 
 
 
『え…何?』
 
 
 
「容体が悪化して…」
 
 
 
目の前に泣きだす女子達が
俺を見上げていった。
 
 
 
「亡くなったけんに…」
 
 
 
しんとなって
メンバーの笑顔が消えた…
 
 
 
窓口に群がる観衆の中から
みんなを押しのいて
キャプテンが俺に
 
 
「おいっ何しとんじゃ!!
早く病院にいき!!」
 
 
 
と背中をたたいた。
頭が真っ暗になった…。