「たじみ茶碗まつり」ポタ 番外編 ”だんご屋” | A happy manual ~シアワセの説明書~

A happy manual ~シアワセの説明書~

飽き性の凝り性の”たれ”が綴る
私自身がシアワセになるための説明書です。

-お品書き-
・じてんさのこと
・うさぎのこと
・釣りのこと
・他愛もないこと
ボチボチやって行きます。

ご意見ご質問はdahonclubtokai@gmail.comでもお受けしております。



~だんご屋~

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「ちわ~!おかみさん、

だんご3本焼いて下さ~い。」


いつもと同じ勢いで店に入ると、


「ごめんねたれさん、

今日はもうなくなっちゃったんだわ。」


と、つれない返事


「残念!今日はいつもより

ちょっと遅かったもんね。」


いや、遅くはない、

いつもこの時間ならあるはず。

今日は特別お客さんが多かったのだろうかと思いつつ、

置いてあったフリーペーパーに手をのばした。


「お茶でも飲んでって。」


このお店には、

他にも手作りのおかず味噌や惣菜、
今日は栗の渋皮煮まであった。


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「それじゃ~今日はおかず味噌もらうわぁ。」


いすに座りお茶をすすり、

いつも居る猫ちゃんの姿を探す。


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お店の中の風景はいつものとおりで変わらない。

いつもと違うのは、火を落として冷え切ってしまった厨房、


それと心なしか硬いおかみさんの表情。

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湯のみをテーブルに置く、
それと同時におかみさんが口を開いた。


「たれさん・・・。今日はよくきてくださった。」


しみじみと言うおかみさん、


「またまた~、あらたまって~なになに?」


のしかかる重い雰囲気が払拭したくて、
わざとおどける様に切り替えした。


「明日からしばらく店を閉めるの・・・。」


全くの想定外の言葉に、
次の言葉がでるまで2~3秒はかかったと思う。


「えっ?しばらくって、いつまで?」


それは大変難しい質問だった。


「いつまでか、分からないの。」


思わず

「どうして?」

と言いかけたとき、

他のお客さんが入ってきた。


それっきり理由を聞けなかったし、
おかみさんも説明はしなかった。




初めてこの店にきた時は、
小雨が降っていたこと。


泥だらになって帰ってきた、
猫ちゃんに甘えられて、
膝の上が汚れてしまったこと。


だんごを買って帰るときに駅前で、

事故にあったこと。


色んなことを思い出しながら、
しばらくは他愛も無い会話をつづけた。



気持ちの整理もつかぬまま

2杯目のお茶を飲み干し
時報に促される様に席を立った。


「そろそろ帰ります、またお店はじめたら絶対にくるから、

それまでどうぞお元気で。」


「たれさんもお元気で、いままでありがとう・・・。」


おかみさんは深々と頭を下げた。


ため息が出そうになるのを深呼吸で打ち消し、

秋空を仰いでから走り出す。

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今までいた場所がどんどん遠ざかって行く。


秋風はこんなにもすがすがしいのに、

心の中には小雨が降っていた。


あの店で初めてだんごを食べた日の様に・・・。







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