遠野放浪記 2015.09.20.-03 神々が戻る場所 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

馬場での諸事が始まるまでに、八幡宮本殿には遠野中の団体が集結し、それぞれ祈りや芸を捧げて行く。

遠野のあらゆる土地の神々が一ヶ所に集う様は荘厳だ。

 

 

 

 

 

 

神輿を持つ団体は、本殿に首を垂れ神に祈った後、神輿を高く掲げて勝鬨を上げる。そして、次に八幡を離れて街を練り歩く日に備え、神輿を神輿殿に運び込んで眠りに就かせる。

 

 

 

神楽や踊りの団体は、笛や太鼓を賑やかに奏でながら参道を上って来るところもあれば、厳粛に静寂を守って上って来るところもある。

 

 

 

俺が本殿の近くをうろついているタイミングで来たのは、大出早池峰神楽。大所帯だけあり、参道を上り切るのにもかなり時間が掛かっている。

 

 

 

これだけの人数、本殿前に収まり切るのかと思って見ていたが、統率の取れた動きで収まり、他の団体と同じく神に祈りを捧げた。

 

 

そして、人と神が交わる権現舞が始まった。

 

 

 

 

 

 

静寂に包まれた八幡に、ゴンゲサマが力強く歯を打ち鳴らす乾いた音だけが響いている。

参道を下った馬場には大勢の人が集まり、賑やかな声、時折馬の嘶きが聞こえている。それら全てが、ゴンゲサマの音が作り出す結界から遠く離れた別世界のように思えた。