黒磯駅には長い貨物列車が停まっている。東北本線は日本の物流の大動脈で、貨物列車が一日中ひっきりなしに行き交っている。
此処から東北の入り口、汽車は暫く山の中を走り、見えるのは小さな集落と、ただ山を越えて行くだけの寂しい道のみである。
途中で越えたのは余笹川という川で、見えている建物は町の運動場だ。
汽車はまた山の高い場所を走り、見下ろす集落が小さな箱庭のように見える。
黒川という川を渡ると、一気に視界が開けて広い田園と山々の姿が見える。地図を見ると、あれは三本槍岳という山のようで、あの向こうに会津の街々がある。手前に見えている人工物は、東北新幹線の線路だ。
やがて汽車は街へ降り、白河の関を越える。旅はいよいよ東北へ突入だ。
秋が深まって来たため、時間が経っても太陽はあまり高くには昇らない。山の稜線を這うようにして、優しい光を地上に投げ掛けている。
既に稲を刈り終えた田圃には、人の姿はない。街は時々遠くに見えては消えて行く程度だが、郡山が近付くに連れて少しずつ車窓の景色が賑わって来る。
安積永盛駅を過ぎ、いよいよ郡山駅が目の前に迫って来ると、車窓に何やらモダンな建築物が見えて来る。これはビッグパレットふくしまという多目的施設の渡り廊下で、向こうに見えているボーリングのピンはタイトーが経営するボーリング場のようだ。
郡山は県内で一番大きな街で、経済規模は東北では仙台に次ぐ規模であるという。東北二の大都会・郡山という訳だ。
未だ旅はようやく三分の一を過ぎた程度だ。郡山を過ぎると、また車窓には広い田園と山々、そして小さな集落が見える景色が戻って来る。