昨今の昭和への懐古や、アメリカの25年ル

ールなども関係してか、クルマもこの時代

に生産されたものが持て囃されていて最近

の旧車価格は異常なほどの高値で取引され

るようになった。


このようなことも影響してか、最近BSなど

で昭和のクルマを取り上げた番組が幾つか

企画、放映されている。


昨年の3月までであれば

『昭和のクルマといつまでも』がBS朝日で

放送されていたし、


現在進行形ならNHK BS1 BSPで『さがせ!

幻の絶版車』が不定期ながら放送されてい

る。


この番組は昨年の大晦日から今年の元日に

かけて(新作となる)第5弾の前段として過

去に放送した4作品を一挙に放送してから

元日夜に(新作を)放送するというかたちを

採り、『スペシャル』と銘打った回を除き

全てを一挙に見ることが可能だった。

番組をナビゲートするのは自動車雑誌NAVI
などの編集長を務めていた鈴木正文氏と、
クレイジーケンバンドの横山剣氏という、
何れもクルマに造詣の深いお二人。

構成はクルマ好きなら誰もが知っているメ
ジャーな旧車を取り上げ、在り来たりなう
んちくを語る・・・

というものではなく、

マツダ・ライトバス(第1弾)
スズキ・フロンテ800(第2弾)
トヨタ・パブリカディタッチャブルトップ、
プリンス・グロリア6ワゴン(第3弾)
くろがね・ベビー、
ダットサン・ピックアップ U220(第4弾)
(※スペシャルと銘打った回は3輪乗用車の
ダイハツ・ビーと、トヨタ・初代トヨエー
ス(後期型)が、取り上げられていたらしい
のだが、僕は残念ながら見ていない)

・・・という、

登場当時に斬新過ぎたり、実用性が低く市
場から受け入られず不人気となったり、販
売力が弱くメーカー自体がもう存在しない
会社のクルマだったり、働くクルマとして
生まれた為に酷使されて残っていない・・・

など様々な理由で消えていった絶滅寸前の
希少車たちに絞ってスポットを当て、更に
は、今もナンバープレートが付いて自走可
能な状態の個体に限定して探し出すという
ドキュメント。

インターネットが普及した現代だから情報
収集や捜索が可能な企画だとも言えるが、
それでも、この世にもう生き残っていない
と思われていたにも拘らず、根気強くこう
した絶滅危惧車を見つけ出してくる番組ス
タッフには正直脱帽するし、

探す過程で時には当時の開発者や前の所有
者が登場し、当時の思い出や開発秘話を披
露する場面も盛り込むなど、

僕のような変わった日本車を好む珍車変態
には勉強になる上、素直に楽しんで見るこ
とが出来、
とても有意義な番組だと感じている。

ところで、

今回の新作【第5弾】もこの流れを踏襲し、


ミツビシ・コルト800ファストバック、


ホンダ・T360スノーラ、


という、なかなかのマニアックぶりと言

うか、白眉なチョイスをしていた。



中でもミツビシ・コルト800ファストバッ

クは第2弾で紹介されたスズキ・フロンテ

800同様、もくもく白い煙を吐き出す3気

筒2サイクルエンジンだったことで騒音と

排ガスの問題が災いし全く売れなかったと

言われている。


そこで基本デザインとコンポーネントを踏

襲しつつ、煙も少なく静かな4サイクルエン

ジンに換装されたコルト・1000F / 1100F

にすぐさま取って代わられた。


このことから販売台数(残存数)が非常に少

ない為、今から20年くらい前には既に800

ファストバックは絶滅したと言われていた。


番組ではこのクルマを探す手掛かりとして、

14年前に刊行されたある旧車雑誌の記事に

注目していた。

↑番組が手掛かりとしていた旧車雑誌
(ちなみに画像の雑誌は僕が保管しているもの)


そこには不動車となり、廃車置き場に持ち

込まれるも貴重なクルマのため、潰さずに

レストアベースとして引き取り手を待って

いることを伝える内容が載っていた。

(※細かな紙面の内容は問題があるといけな
いので敢えてぼかしを入れています)

その後、これを発見したあるカーマニアが

サルベージし、レストアを行っていると言

うところまで突き止めた番組は現オーナー

にインタビューを敢行している。


しかし、引き取ってからレストアを始める

も、エンジン部品が揃わず滞っているとの

ことで10年あまり放置状態のままとなって

いた・・・


なので、

すぐに公道復帰することは不可能・・・


・・・と言うことで、


公道を走れるクルマを探すことは出来ず、

ここでコルト800ファストバックの捜索は

暗礁に乗り上げた。


結局、このままでは番組的に不完全燃焼と

なるので、代替案として4サイクルエンジン

に換装されたコルト・1100Fに白羽の矢を

立て捜索を再開。


1100Fでも十分にレアな車で難航していた

が、こちらは千葉県で発見され、無事披露

もされた。

(↑こちらはそのオーナーさんが製造元であ
る岡山水島製作所にクルマを里帰りさせた
時の模様)

僕的には凄いことだと思うのだが、
まぁ、クルマに何の興味も無い人に言わせ
れば、古いクルマなど今のクルマに比べて
環境性能は低いし、燃費は悪いし煩いし、
快適装備なども皆無だから、存在価値など
見出だせず、絶滅したって良いと思ってい
るだろう。

しかし、こうして時代の流れに淘汰され、
消えて行こうとしている先人たちの努力と
工夫の積み重ねが、数々のクルマを生み、
そして、現代の高性能なクルマにもフィー
ドバックされているということは知ってい
て欲しいと思う・・・

幻となりつつある努力と工夫の結晶(=車)を
後世に残すために維持したり、再生したり
すること・・・

これはこれで立派な文化なのだ。


(エンディングテーマ曲 CKB : 生きる)

この番組にぴったりの良い選曲だと思う。