『最近両親と出掛けていないな』と思い、
二人が行きたいと以前言っていた少し離れ
た山間にある寺に『参拝に行こう』と言っ
て連れ出した。

連日の暑さも少し和らぎ、過ごしやすくな
ったことと、お盆の間は猛暑の中でずっと
稲刈りをして疲れていたであろう高齢の二
人には無理なく連れ出せる陽気だろうと思
ったのが理由でもある。


移動中の車内では両親と絶えず会話していた。
その内容は別にいつも隣の母屋で暮らして
いて始終顔を会わしていることもあり特別
目新しいとか、深刻な話題ということもな
く、ただ良くある世間話で終始した。

そうしているうちにやがて目的地に到着し、
クルマを降りた。
山門を潜り・・・
鐘を鳴らし・・・
参道を抜け本堂へ向かう・・・
そして無事お参りを済ませ帰路に就く為、
もと来た参道を戻っていく。

この時、僕は前を歩いている二人の後ろ姿
をみて・・・

以前に比べて一段と歩みが遅くなり、そし
て背中が小さくなったこと気付かされた。

と、同時に
『両親とは後何回この地を踏むことが出来
るだろう・・・?』

『後何回こうしたドライブも出来るのだろ
う・・・』ということを考えてさせられも
した。


子供の頃、親父の運転する青いミラージュ
で訪れたこの地を、
今は僕の運転する青いプリウスで訪れてい
る・・・
少し色づき始めた境内の大きな銀杏の木は
あの頃とさして変わらないように見えてい
ても・・・
月日は平等に、そして確実に流れているこ
とを思い知らされた・・・。

帰路の車内で揺られる二人を見ていたら、
もう少し共にドライブしたくなってきて

かつて親父が言っていたのを真似て、

『ちょっと遠回りして帰らないか?』と言
った。


その時の親父とお袋の笑顔・・・
・・・たぶん忘れないと思う。