明るい声が響き渡る帰りの通園バスの中、

僕は運転手がギアチェンジする様子を自分

の傘をシフトレバーに見立てて真似して遊

んでいた。


まぁ、のりもの好きの幼稚園児がする無邪

気な行動で端から見ても別に異様な光景に

見えることはないだろう。


しかし、そんな遊びにも、おともだちとの

他愛のない会話にも飽きて窓の外を見始め

ると、僕は不可解なことを考え出し悩むこ

とを繰り返していた。



『なぜ、僕はこの(僕という)身体の中に入

っているのだろう・・・ここから出ること

は一生出来ないのか?』


『みんなの顔は見えているのに、どうして
僕の顔は鏡越しでないと見られないんだ?』

『(僕の見ている世界に)僕の姿は手や身体
の一部しか見えない。
みんなの姿は全部見られるのに・・・。』

『中から覗いている(目から見えている)僕
は本当にここに存在しているのか?』

・・・と。


賑やかな車内でこんな不可解なことを考え
ては『この中(身体)から抜け出したい』と
常々思っていた園児はきっと僕ひとりだけ
だったに違いない・・・。

こんなことをいつから考えなくなったのか
定かではないが、
それでも、小学生くらいまでは時々考えて
いたように思う。


このことを妻や子供たちに話しても当然な
から全く伝わらなくて、

『???』ってなっていた。
(当たり前だろう)

でも、彼らが理解不能であることに僕は
内心ひとり安堵していた・・・。

彼らは僕のように幼い頃からこんな無益で
無意味な暗いことなと考えずに今日まで育
ち、休むことなく普通に仕事や学校に通い
日々、明るく暮らしているのだから。



なぜかふと今日思い出した、僕以外の誰に
も伝わらない、幼い自分が抱いていた不可
解な発想・・・

また明日になったら忘れてしまうだろうから

ここに書き留めておくことにする・・・。


写真はいつかの帰る前に通園バス
(通称:バンビー号/日産エコー)の前で撮っ
たもので、僕は一列目の右から6番目。

ちなみに、運転手は僕の伯父(お袋の兄)だ
ったりする。

※バスの両側に人が写っているのは、
幼稚園に隣接する小学校の生徒たちで心霊
写真ではないのであしからず。
(恐らく掃除の時間で出てきていたと思われる)