ホンダ・ビートが発売されて今年で30年。

僕が愛車として6年落ちの中古車で購入してから来年で25年となる。

随分長い付き合いとなっているが、事の始まりは『(オープンカーで手頃な価格の)ビートって良いな~』と漠然と思っていたことを会社に当時居た某先輩に話したことがきっかけ。


この先輩、仕事とクルマや時計に関しては超ストイックでかなりの拘りを見せる一方、それ以外はちゃらんぽらんで無頓着という、超変わった人。


そんなだから、この話に空かさず反応し、

「おぅ、なら良いのがある所知ってるから、仕事終わったら見に行くぞ!」と言い出した。


一瞬「え?今日?」と思ったが、若かったし、まだ独身だったので時間には余裕があった。

しかし、既に新車で買って乗っていた180SXもあったので、ここは冷やかし半分で見に行くことにした。

その販売店の担当者は先輩の知り合いだそうで、挨拶を交わして詳しい説明などを聞く・・・


◯平成3年式

◯走行45,000㎞

◯修復歴なし

◯コミコミ65万円・・・

※ちなみに、最初のオーナーは隣県某市の人、二番目のオーナーは県内西部の人ということが整備手帳や車検証から判った。

続けて担当者は「試乗も出来ますよ」と言いながら、おもむろに幌を開け放ちはじめ・・・


「お好きなルートを走って構いませんので乗ってみますか?」と一言。


それに呼応するように先輩は「俺、横に乗るわ」と続ける。

こんな発言と行動に、販売店と結託して買わせる為の作戦なのか?それとも、ただ単なる天然発言だったのか?がよく解らないままではあったが、場の空気にも流されてしまい、僕は「じゃあ、まぁ、ちょっとだけ・・・」と言って取り敢えず乗り込んだ。

エンジンを始動して、ギアを入れ、クラッチを繋ぎ、走り出す・・・


背中と耳に伝わるエンジンの音、地を這うような車高、オープンでも意外と快適な車内、軽快な走り・・・


『これいいな、買おうか・・・』



と、気づくと僕はもう既にビートの虜になっていた・・・。


そう感じていることを知ってか知らずか、無言で走る僕を傍らで視ていた先輩はトドメを刺そうと思ったのか、「おい!◯◯(←僕の名前)、これ良いやん、もう、こんなクルマ出て来んぞ!コレ買っとけ!」と言ってきた。


試乗を終えるなり、

改めて先輩が、「◯◯、行っとけぃ!」というので、僕は「そうします」と答えた。


そして、その場で一万円前金払って即契約した。

(↑当時の契約書)
それから24年の間に、あちこちが壊れたり、ぶつけられたり、ぶつけたりでその都度なんとか修理しながら今日に至っている。

3年前には全塗装もしたし・・・。


モノによっては純正新品部品も出る、再販品も限定的ながら未だに手に入る、外装パーツはヤフオクで探せば中古とはいえ豊富にある。
そして、それらの大方が払えないこともない価格で買える・・・。

税金は古い車だから値上がりはしたが、それでも普通車よりは安い、燃費も17㎞/㍑と悪くない。

と、ビートに永く乗って来れたのは、このような要素があったのも大きかったが、

それより何より、
今も乗っていて楽しくて仕方ない!というのが正直な気持ち。


だから、このクルマ以上に「人生を伴にしたい」と思わせるものと未だ出逢うことは出来ていない。
クルマとの付き合い方は人それぞれで、ドライバーの数だけ違ったスタイルがあるものだが、末永く愛着を持って接しているうちに家族の一員のように感じはじめることも、付き合い方として、ひとつのスタイルだと言えるのではないだろうか。

昔、ビートを販売していたディーラー『ホンダ・プリモ店』のキャッチコピーに
『クルマが家族になる』というのがあった。
このフレーズは今考えると僕には非常に響く言葉だ。

はじめは好きで一緒になって、次第に深く相手を知り、やがて家族となる・・・

僕のエゴなのかも知れないが、
人もクルマも『家族になる』とはそういうことなのではないだろうか・・・。