【照会要旨】
当社は、従来の退職給与規程を廃止して、いわゆる退職金前払い制度へ移行することとしています。そこで、移行日以後の勤続期間部分の退職金相当額については分割して毎月の給与に加算することとし、移行日前の過去勤務期間に係る退職金相当額については打切支給を実施することとします。
この場合、引き続き勤務する使用人に対して支払われる一時金は、所得税法上どのように取り扱われますか。
【回答要旨】
いわゆる退職金前払い制度への移行は、新たな退職給与規程の制定に当たらず、照会の一時金は「給与所得」となります。
退職時に支給する退職金相当額を在職中の給与に上乗せして分割支給する制度は「退職金前払い制度」と言われているようですが、この制度により支給される退職金相当額は、退職により一時に支払を受ける給与ではありませんので、退職所得には該当せず、給与所得となります。ただし、退職金前払い制度へ移行が行われた場合であっても、その移行日前の過去勤務期間に係る一時金を使用人が実際に退職するまで据え置いて支給する場合には、その一時金は退職所得となります。
ところで、引き続き勤務する役員又は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、新たに退職給与規程を制定した場合において、使用人に対しその制定前の勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与で、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、「退職所得」として取り扱われます(所得税基本通達30-2(1))。
しかしながら、退職金前払い制度に基づいて分割支給される退職金相当額は退職所得には当たりませんし、同制度への移行は「新たな退職給与規程の制定」とはいえません。また、その移行日前の過去勤務期間に係る一時金を使用人が実際に退職するまで据え置いて支給することも可能であることからすると、精算の必要があるとも認められません。
したがって、退職金前払い制度への移行に伴って、引き続き勤務する使用人に対して支払われる一時金は、「給与所得」となります(所得税法第28条第1項)。