* 情 け な く て *
課長と会ったその足で、彼氏と会いました。
車のなかで話してたんですが‥
彼氏はやっぱり反対。
自分がどうしたいかも分からんので、
はっきり主張もできない。
あたしは頭を抱えた。
彼氏に言われました。
結局、俺はお前の理想じゃないんやね。
お前は俺の給料じゃ少ないけん、
自分が稼がないかんって思うんやろ?
俺は給料少なくても、お前とやっていきたいと思っとる。
でも、お前は俺じゃないんやろ?
俺はお前の理想には遠いし、お前の重荷になっとるね。
何でそうなるんやろ?
って思いながらも、
どっちにするか、もう少し考えると伝えた。
どれくらいの時間が経ったか分からん。
あたしが悩んどる間、彼氏も下向いたまんまだった。
そして。
『手、貸して』
と言われたので、右手を差し出した。
あたしの右手を、両手で包むように握ってた彼。
しばらくして、小声で言った。
『営業したら?』
嫌な予感がした。
『何考えとん?』
あたしは声が震えた。
『昨日話してたこと。』
彼はさらに強く手を握った。
前日に、話した。
『自分が悪くても、そうじゃなくても、次別れるって言われたら、あたしは引き止めん。』
と。
嫌な予感は的中。
あたしはいやだと言った。
でも、彼は変わらなかった。
無言が続いた。
すごく、すごく悩んだ。
別れたほうがいいのか、
でも、やっぱり別れたくない。
あたしは涙が止まらなかった。
彼も下を向いたまま。
でも、あたしには分かった。
彼も泣いていたこと。
あたしは彼に近寄った。
目頭を押さえたまま
下を向いたまま、
来るなと言った。
彼もなかなか言えなかったんだと思う。
『別れよう』の一言が。
意を決したように、彼はあたしを抱きしめた。
強く、強く。
そして、優しく。
頭、肩、背中をゆっくりと撫でた。
そして、とても小さくて、
とても弱い声で、あたしに言った。
『情けなくてごめん。』
少し落ち着いてた涙が、
また溢れてきた。
彼もまた、涙が流れていた。
今までほとんど謝られたことなかった。
こんなに弱い彼を見たのは初めてだった。
『俺が重荷でごめんな。
やると決めたら、精一杯やれよ。』
頭を撫でてくれて、髪を整えてくれた。
顔を包むように、涙を拭ってくれた。
ゆっくりと、ゆっくりと。
あたしの姿を目に焼き付けるように。
あたしの感覚を覚えておくように。
とても、優しく。
彼の目は穏やかで、
でも、涙は流れてて。
そんな彼を見て、
あたしも諦めなきゃと思った。
彼が意思を固めてしまったから、
あたしも受け入れなきゃと。
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