──聞こえない声に、耳をすますな。


歌舞伎町で深夜を過ごす10代の少年少女たち、通称「トー横キッズ」。
彼らのまわりには、日々変わっていく現実と同じくらい、変わりつづける噂話がある。


以下は、最近のトー横で聞いた噂話3選。
真偽は不明。便所の落書きとして、暇つぶしにどうぞ。
 


 

1つ目:消えるキッズと「某NPO団体」


ここ数ヶ月、炊き出しを定期的にやっている某団体が話題になっている。
名前は伏せる。迷惑になるかもしれないので、イニシャルも出さない。


SNSにも写真が出回ってる。
毛布を配ったり、味噌汁やスープを渡したりしてる様子は、一見ふつうの支援活動。
けど、じっと見ると違和感がある。


たとえば、配ってる炊き出しのメニューに「カレー風味の茶碗蒸し」「ラベンダーゼリー入りのうどん」なんてのがある。
珍しいというより、「変わってる」の範疇をちょっと超えてて、なんかこう、……整合性がない。


で、この団体に「ついて行った」子が、その後SNSからもトー横からも完全に姿を消したという噂が出てる。
証拠はない。誰かの家に保護されたのかもしれないし、地元に帰っただけかもしれない。


でも、消えた子のLINEを開いても、ずっと未読のままなのが、不安を煽る。
ある意味、現代的な「失踪」の形なのかもしれない。
 


 

2つ目:笑顔の偽警官


トー横で見かける警察官の中に、毎回顔を思い出せない人間がいる。


優しい。すごく、異様なほどに。
「無理して帰らなくていいよ」「疲れてない?」と、トーンも穏やか。
でも、話すたびに、どこか背筋が冷える感じがする。


この前、本物の警官が通りすぎた直後にその「誰か」に声をかけられて、ようやく違和感の理由がわかった。
制服の色が、微妙に薄い
靴が磨かれすぎている。
そして――腰に、何もついていない。警棒も無線もない。ただのベルト。


近くのコンビニの監視カメラにも映ってなかったらしい。
目的は不明。でも今日も、その「誰か」は歌舞伎町で、キッズに話しかけている。
 


 

3つ目:青いタブレットと「Dの部屋」


これは完全に都市伝説だけど、トー横キッズの間で急に噂が広がり始めている。


ときどき、青いタブレットが回ってくることがある。
薬と言っても市販薬とか、そういうの。そういうモノを交換するのは、ここのコミュニケーションの一種でもある。


でも、このタブレットは違う。
正体不明で、配っているのは「Dの部屋」と呼ばれる、正体不明の団体だという。
渡すだけで特に強要もしないらしい。
でも、タブレットを受け取ったあとに、何らかの連絡が来るという。
それをキッズたちは「入室」と呼んでいる。


なぜそれが「カルト」と呼ばれているのか。なぜタブレットを配るだけで活動になるのか。
正直、わからないことばかりだ。


ただ、「Dの部屋」は超能力を否定する活動をしているという話だけが、なぜか妙に具体的に伝わってきている。
それが何を意味するのか、今はまだ誰にも分からない。
 


 

以上、トー横で聞いた最近の「魔の手」系の噂話。
現実と幻想の境界が、曖昧になっていく夜のなかで、こんな話がどこかに引っかかっていくかもしれない。


くだらないと思うか、兆しだと思うかは、あなた次第。
街は何も言わない。ただ、静かに見てるだけだ。