(長女の誕生、そして中国出張があり、更新大分遅くなってしまいました!)

 ソビエト・アヴァンギャルド芸術を満喫した後はバザール散策。さすがにこの時間にもなれば、店はみんなオープンしている。

土色の街の雰囲気に潤いを与えるようにカラフルな野菜や果物が並び、パスタのような食材、ビスケットやキャンディ等のお菓子が山積みになってバラ売りされている。
 
ハミ瓜(中央アジアのメロン)は80年代にウズベクを訪れた時もバザールでは目玉商品であったが、こちらでも健在。
 
健在と言えば、昔カザフスタンで見たカップ式炭酸水販売機も。

当時は給水口の真下に汚いガラスコップが一個だけ置かれており、皆同じコップで飲んでいたことに驚愕したのだが、この販売機にはコップが常備されていなかった。店の人に声をかけたらコップをもらえる方式になっているのかも知れないが、初めて見たあの時から25年経った今もコレを利用する勇気は無い。飲み物と言えばもう一つ、給水タンクから汲み出す形で売られていた「モルス」というものがあった。
 
給水タンク式の店舗が正に旧ソ連でポピュラーな飲み物であるクワスとよく似ている。飲み物の色あいもクワスに似ている。僕はクワスを飲んだことは無いのだが、海外を紹介するテレビ番組のレポーターでこの飲み物を美味しそうに飲む人はまず見たことが無いので、そのイメージが先行した僕はこの「モルス」という飲み物も断念した。

 僕がこのバザールで探したいのは何のことは無い、現地語で書かれた大手新聞と現地ポップスのCDである。決して入手困難な珍しいものではない。これまで訪ねてきた40余りの国々では普通に入手できたものである。しかしこのバザール、新聞を売っている場所は一か所しか無く、しかもあるのは欧米の芸能人のゴシップ記事だけが書かれたタブロイド紙かスポーツ新聞ばかり。しかもどの新聞も一面を大きく飾っているのはなぜかクロスワードパズルだ。現地語は現地語なのだが、もう少しまともな新聞は売ってないのか?イスマイルを通して聞いてみるが、逆に首をかしげられた。


 では現地のCDを探してみるとするか。あちこち歩き回ってみたが、これもまたどこにも見つからない。その辺の店舗の売り子にイスマイルから聞いてもらう。売り子はあっちだと指をさすのだが、その方向に行ってみるとCDではなくDVDの店だったりする。もちろん音楽のCDは売られておらず、あるのは欧米映画のコピー品だけ。せめてこの国かウズベキスタンの映画のDVDでもあれば少しは興味も湧いたのに。しかしヌクスにいられるのは今だけ。地方に行ってしまったら、見つけるのは更に困難になるだろう。イスマイルはほとんどあきらめ顔であったが、僕はめげずにもう少し探してみた。イスマイルがたまたま携帯のSIMカードを売る店の少年に聞いてみた所、コピー物なら売ってる所を知ってるよ、という答えが返ってきた。更に少年は親切にその場所まで案内してくれた。意外にもそこは先程僕達が探し回っていたエリアと同じ並びにあった。二畳半ぐらいの狭い店内は、パソコンの置かれた粗末なテーブルが二つあるだけで、パっと見た限りでは何の店なのか全くわからない。聞いてみると、ここもまた携帯のSIMカードや部品を売ったり、修理したりする店だそうで、老若男女問わず手に手に携帯を持った客がひっきりなしに出入りしていた。つまりこの店、パソコンに入った現地ポップスを空のCD-Romに焼くサービスもしてくれるというわけなのだ。なるほど、こういう店は以前トルコでも見たことがある。3,000スムを渡した僕は他の客と並んで小さな椅子に座って待つ。若い店員はパソコンから手際良く300曲ほど選んでCD-Romに焼いてくれた。とりあえずカラカルパクスタン・ポップスの音源はゲットできたものの、コレクター的にはちょっと不満が残る。いわゆるCD屋さんで売ってるようなジャケット付きのCDアルバムが欲しいのだ。それを入手するのはこの国では不可能なのだろうか。CD-Romが手に入ったんだから、もういいだろう、とイスマイルは言う。欲しいのはDVDでもVCD(アジアに多いDVDの簡易版)でもなく、ミュージックCD!曲を焼いた空CDじゃなくて、パソコンでしか聞けないヤツじゃなくて、CDアルバム!ほら、歌手の顔写真が入ってて、曲名も書いてあるやつ…、見たことない? 音楽CDのアルバムとは何ぞや、を一から説明したのは初めてである。それほどこの国では音楽ソフトが流通していないのか。いや、きっと昔はあったのだろう。だが今や音楽はネットからダウンロードして聞くのが主流となり、CDが売れなくなっている時代。ある意味この国は先端を進み過ぎているのかも知れない。

近い将来、どこの国に行ってもCDのような音楽ソフトを売る店は無くなり、ここヌクスみたく、今後いろんな国で現地のポップスを探すのに苦労することになるのだろうか…。そんな予感がしたバザール散策であった。
 
 

さてさて、毎度アジア旅の楽しみとしてきたCD探しが思いもよらず空回りしてしまったが、この国の観光のメインは「カラ回り」。なんて、ダジャレみたいになってしまったが、要は中世ホラズム王国の城跡巡りである。気分を入れ替えて車はウズベキスタン本土の方向である南部に向け、キジル・クム砂漠を二分するような直線道路を走り出すのだった。