さやかside



今、私たちの住む世界はウイルスの脅威におびやかされていて、不要な外出を自粛するというルールがあります。


グループを卒業して、東京での一人暮らしを始めてからかなり経ってるから、自粛すること自体はそこまで苦じゃない。


でもひとつだけ、大好きな恋人のゆーりに会えていないことが寂しくて寂しくて仕方ない…。



『会いたいな…』



ビデオ通話したいって言おうとしたこともあるけど、最近あんまり稼働してなかったLINEでそんなことを伝える勇気はなかなか出なかった。



『もしもし、ちょっと相談やねんけど…』
「さや姉〜!珍し。ゆーりとなんかあったん?」



こういうときにすぐにゆーりのことだって察してくれる朱里には本当にいつも助けられてる。


『会いたい、、』


私がそういうと朱里はめちゃめちゃ笑って


「本人に言ってあげーや!私は紗英ちゃんにちゃんと会いたいって伝えてるで!もう切るで〜!ゆーりも会いたがってるで」


『いや、ほんまに切るんか…』


もう切るといって本当に切られたけど、私は切られる直前にボソッと言ってた一言を聞き逃さなかった。



その夜、勇気を出してゆーりに連絡すると、既読が付くのとほぼ同時に電話がかかってきた。



「さやかちゃん…?」



ゆーりの声を聞いた瞬間、涙が止まらなくなって鼻をすすっていると


「彩ちゃん?泣いてる!?え…どしよ…。大丈夫?」

『大丈夫…ゆーりぃ…?』

「どうしたの…?」

『会いたい』


会いたいと伝えると、少しの沈黙のあとに小さな声でビデオ通話にしよっかと言われたのでビデオ通話にすると


「さやかちゃん、私も会いたいよ」



と微笑むゆーりを見てずっとこの人を大切にしよう、自粛が終わったら1番に会いに行こうと心に誓った。


その日を境にほとんど一日中電話を繋いでる。何も話さずただただ電話を繋いでおくだけのときもあるけど、それでも繋いでおきたいと思い合える関係性を今は育てて行こうねと2人で笑い合った。





〜おまけ〜

『ゆーり…もう寝る』
「分かった。おやすみ、電話は繋いどく…?」
『うん…』



「彩ちゃん、もう寝た…??」
『…』
「おやすみ、愛してるよ…。」