【前検事総長但木敬一氏 指揮権に存在意義はある】

30日の日経は、前検事総長但木敬一氏とのインタビューで「検察の暴走に歯止めをかける民主的システムであり、存在意義はある。造船疑獄以来、指揮権の発動が行われていないのは、政治の世界が準司法的役割を果たす検察に対して謙抑的に臨んでくれてきたことや、総体として検察が公平公正であることについて国民の理解を受けてきたことなどによるのだろう。 検察が国民の信を失うようなことになれば指揮権発動が現実性を帯びることになる。」と報じた。
これをどのように論評するか。

-----警察法
(設置及び組織)
第4条 内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く。
2 国家公安委員会は、委員長及び5人の委員をもつて組織する。
(任務及び所掌事務)
第5条 国家公安委員会は、国の公安に係る警察運営をつかさどり、警察教養、警察通信、情報技術の解析、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、並びに警察行政に関する調整を行うことにより、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持することを任務とする。
(設置)
第15条 国家公安委員会に、警察庁を置く。
(長官)
第16条 警察庁の長は、警察庁長官とし、国家公安委員会が内閣総理大臣の承認を得て、任免する。
2 警察庁長官(以下「長官」という。)は、国家公安委員会の管理に服し、警察庁の庁務を統括し、所部の職員を任免し、及びその服務についてこれを統督し、並びに警察庁の所掌事務について、都道府県警察を指揮監督する。
(警視総監の任免)
第49条 警視総監は、国家公安委員会が都公安委員会の同意を得た上内閣総理大臣の承認を得て、任免する。
2 都公安委員会は、国家公安委員会に対し、警視総監の懲戒又は罷免に関し必要な勧告をすることができる。
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-----検察庁法
第7条 検事総長は、最高検察庁の長として、庁務を掌理し、且つ、すべての検察庁の職員を指揮監督する。
2 次長検事は、最高検察庁に属し、検事総長を補佐し、又、検事総長に事故のあるとき、又は検事総長が欠けたときは、その職務を行う。
第14条 法務大臣は、第4条及び第6条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。
但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。
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-----自衛隊法
(内閣総理大臣の指揮監督権)
第7条 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。
(防衛大臣の指揮監督権)
第8条 防衛大臣は、この法律の定めるところに従い、自衛隊の隊務を統括する。ただし、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の部隊及び機関(以下「部隊等」という。)に対する防衛大臣の指揮監督は、次の各号に掲げる隊務の区分に応じ、当該各号に定める者を通じて行うものとする。
1.統合幕僚監部の所掌事務に係る陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊務 統合幕僚長
2.陸上幕僚監部の所掌事務に係る陸上自衛隊の隊務 陸上幕僚長
3.海上幕僚監部の所掌事務に係る海上自衛隊の隊務 海上幕僚長
4.航空幕僚監部の所掌事務に係る航空自衛隊の隊務 航空幕僚長
(幕僚長の職務)
第9条 統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長又は航空幕僚長(以下「幕僚長」という。)は、防衛大臣の指揮監督を受け、それぞれ前条各号に掲げる隊務及び統合幕僚監部、陸上自衛隊、海上自衛隊又は航空自衛隊の隊員の服務を監督する。
2 幕僚長は、それぞれ前条各号に掲げる隊務に関し最高の専門的助言者として防衛大臣を補佐する。
3 幕僚長は、それぞれ、前条各号に掲げる隊務に関し、部隊等に対する防衛大臣の命令を執行する。
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我が国は、民主システムの国であり、権力は基本的に議院内閣制の下に置かれ、その権力は内閣に属する。
しかしながら、その権力の行使は警察法、検察庁法、自衛隊法に記されるように、警察権力は国家公安委員会という合議体機関を通じ、検察権力は検事総長を通じ、物理的権力は幕僚長を通じ、各国務大臣が指揮するシステムになっている。

憲法の規定により、行政権は内閣に属するから、検察庁が法律によって捜査を行うことが明記されているのと同様に、内閣もまたその権限を法的に行使し得る。
前検事総長但木敬一氏は「検察が国民の信を失うようなことになれば指揮権発動が現実性を帯びることになる。」と述べたように、この見解に小紙も同意している。
もし仮に、検察権力のみならず、権力機関が恣意的な事由に基づき、民主システムをクーデター(追い落とし)によって倒壊させようとするなら、100%内閣は行政権の最高機関として権限を行使し得る。

マスコミは「小沢 対 検察」「民主党 対 検察」という構図で報じるが、この姿勢は極めて危険である。
議院内閣制に基づけば、内閣と議会は表裏一体であり、政権政党イコール内閣なのであるから、上記の構図が事実なら『即日に指揮権が行使』されることになる。

政治とは統治システムのことであるから、議院内閣制の我が国で、行政権の下にある機関はすべからく最高機関である内閣に服すシステムとなっている。しかしそのあり方は前述のように定められている。
したがって公正な公益の実現が行われている場合、その権力機関は支持され、その結果として国民主権の委任が継続して行われるものと考えている。

処が、とある元警察庁長官がポロリとこぼした「自民党には及ばない」という一言がその後の国民不信感を惹起した。
昨日、朝ナマで元検察庁検事が持論を述べておられたが、我が国は国民主権国家であり、その権力は政治的に国民によって委任されているに過ぎない。

その関係が委任である以上、その委任関係が不確実なものとなれば、当然のことながらその権力は国民主権に帰属することになる。検察は、国民の代理人であり、その権利は、国民の代表者を通じた内閣の意志決定の下にある。
しかし、その公益の実現が公平であるとの心証を国民が有し、支持している場合に限り、慣習的に独立した機関として事務を行えるものと解している。

だが、組織的に裏金をつくり、そのもみ消しに旧政治勢力に借りをつくり、その政治勢力の意を汲んで、新しい政治勢力に対し恣意的な権力の行使を行うなら、それは断罪されるべき所業である。
また、小紙はマスコミの立てる「小沢 VS 検察」「民主党 対 検察」という構図自体が信じられない。
こういう構図があるなら、それは只のクーデターであり、当然のことながら指揮権が発動される。
要は、二・二六事件と全く同じである。
狙いは、ずばり、小沢一郎の政治的抹殺だろう。

前検事総長 但木氏は「検察が政治的になってはいけない。与党であろうと野党であろうと特定政党や政治家をターゲットに、これに打撃を与えることを狙って検察権を行使することは到底許されない。 」と述べている。
これが真っ当な人のいうことであり、小紙からすれば「自民党には及ばない」とか「小沢 VS 検察」とかの構図は極めて異様に映る。

しかも国会の開会3日前に現職国会議員を逮捕する。
あることないことリークを行い、犯罪者に仕立て上げる。
さようなことがこの民主主義社会で許されていいわけがない。

朝ナマで元検察庁検事が「なら、国会議員20名揃えて保釈請求すればいいじゃないか」と言い放った。
つまり政治的問題にすればいいだろうと言ったのだ。裏返せば、民主党の政治的打撃になると述べているわけだ。背反から見れば、それはまさに政治に検察が介入していることを示している。
簡単に言えば、検察権力の政治利用、ということを意味する。
そこで「それは検察権力の政治利用ではないか」と誰も言わないところに、朝ナマ出席者の限界がある。
あのひとことは大失言なのであり、上記の問いに「イエス」と言える人は誰一人としていない。

したがって「小沢 VS 検察」「民主党 対 検察」の構図立ても誤りである。
「なら、国会議員20名揃えて保釈請求すればいいじゃないか」の意味は「かかってこんかい」ということであり、そこまで言うならば民主党政権が言うことは最早ひとつしかない。
それは「分かった」ということだろう。
何か小紙は、間違ったことを言っているか。
皆さんの御意見もお待ちする。