秋の夜長に読んだ竹内洋岳さんの「登山の哲学」(NHK出版新書)は、「挑戦を続ける喜び」が綴られている本です。一気に読みました。
8000m峰全14座を登頂した初めての日本人、14サミッタ-と称号されるプロ登山家、竹内洋岳さん。
海のように広く、山のように高くと祖父が命名してくれたそうです。
山に登りたくなるのは「登りたいから仕方がない」と。

巻頭に、14座登頂のリストが掲載されています。
2007年のガッシャブルムⅡ峰(8035m)の雪崩で重傷を負ってからも、けがを克服してさらに8000m5峰登頂達成。いかに安全な登山を作り上げていくか、それが「超高所登山に挑む登山の面白さ」と言います。

リハビリ中に、その登頂を支えてくれた山岳気象予報士・猪熊隆之さん(左)との出逢いが綴られています。その頃は猪熊さんも闘病中でした。
精度の高い、長期予測の山の天気予報は「つくる」ものと。
猪熊さんの正確な気象予報に、幾度も助けられたそうです。

「登山の哲学」のアンソロジ-です。
・頂上に行って戻って来ることは、海の底にタッチして戻って来るようなも
のだ。登山中はすでに海の中を潜っている。超高所に挑む登山家は、想像
力で危険を回避する。
・エネルギ-を消費させない理想的な歩き方
①二本の幅の狭い線路の上をつま先が左右に振れないようにまっすぐ歩く
②浮かせるように上げた足を地面ぎりぎりの高さで、まっすぐ前に出し足
の裏全体をフッと地面に置くような歩き方。一歩一歩を傾斜に合わせて
地面にフッと置くような歩き方。
・「エピロ-グ-14座の先にあるもの」の章の最後に
14座に登った竹内洋岳という人間ではなく、14座を含めた魅力ある
高所登山に関心が集まり、登る人、観る人、応援する人が増えていく-そ
れがプロ登山家としての私がやるべき仕事であり、14座の先に見えてい
る頂上の風景なのです。