猛暑が続くので、家にこもって本を読んで過ごしています。
祥伝社の「家康、家を建てる」は家康の活躍を綴るのではなく、江戸の街作りのインフラ整備に奔走した職人達を称えた連作です。

イメージ 1

・第一話「流れを変える」関東北部で利根川東遷という古今未曾有の大事
            業に挑戦した伊奈忠次。
・第二話「金貨を延べる」貨幣鋳造の名人である後藤庄三郎が家康の命を受
            けて江戸独自の大判をつくり、上方の豊臣家に対
            抗しようとした物語。
・第三話「飲み水を引く」水源を探して、江戸の中心部まで水を引いてくる
            大久保藤五郎と春日与右衛門。
・第四話「石垣を積む」江戸城の石垣を探して、積み上げる吾平と喜三太。
・第五話「天守を起こす」大工頭の中井正清の活躍。

江戸の街作りを成し遂げた家康の想いが、随所に綴られます。
・家康は無数の地名を脳裏に呼び出す。それらの地名のことごとく、家康に
 は肌に吸いつくような実感があった。「わしの、街」と。
・神田の山を崩して海を埋め立てた日比谷の地面。鋳貨工場から白黒の煙を
 立ちのぼらせる日本橋の銀座。本郷や愛宕下などの整然たる武家屋敷。
 はるばる七井(井の頭など)から引いてきた上水道が、外堀と立体交差す  
 る水道橋。そこを通って城内に引きこまれた清冽な水は、今も人足たちの
 渇いたのどを冴え冴えと、潤しているはずである。
・白一色の天守。白というのは平和の色なのである。けがれなき色、太陽の
 光を連想させる再生の色。この世のあらゆる色を含む色。そういう色をこ
 の江戸城天守という象徴的な建物に採用することで、天下万民にいくさは
 終った、そのことを家康は高らかに宣言したのだった。

いろいろな映像が浮かんでくる、東京の街を創ったこの小説の映画化が待たれます。