「天下・家康伝」に続いて、火坂雅志さんの真田三代(下)を一気に読みました。これからNHK大河ドラマが、もっと目を離せません。
①表紙の背景は「大阪冬の陣図屏風」の出城・真田丸の合戦の場面です。

②左上が、上の本に描かれた原図です。その大阪冬の陣図屏風に、出城・真田丸をめぐる攻防がきめ細かく描かれています。
(別冊歴史読本「合戦絵巻合戦図屏風」から引用)

少し長くなりますが「真田三代」のアンソロジ-です。
○真田の軍旗六連銭は、六連星――すなわち、すばるをあらわすものだと父
昌幸から聞いたことがある。あの星のごとく、この暗黒の大宇宙にも似た
乱世の中で、<ひときわ光り輝く存在になりたい...>幸村は願ってい
た。壮心の夢を抱く若き幸村に、越後で出会った直江兼続はひとつの指針
をあたえた。それは、義の精神である。おのれの利を追うことのみに汲々
とするのではなく、さらに大局に立ち、おおやけのため、民のため、弱き
者のために行動するのが「わしの考える義だ」と、兼続は言った。自分に
とって、義とは何か...答えを見出しかねている。
○兼続は幸村に、上杉家の先代謙信から受け継いだ、義の思想を教えた。目
先の利に走るだけが人ではあるまい。たしかに利をつかめばそのときは満
足を得られもしようが、それだけでよいのか。人としてこの世に生まれた
以上、自分も直江どののようにはるか蒼空(そうくう)のかなたにある大
きなものを探し求めるべきではないか...
○真田の心か...強き者,巨きな相手におもねらず、あくまで独立不羈(ふき)を貫く。それが、先祖代々のわが一族の精神ではございませぬか。
○わしは若いころより、つねに心に誓ってきた。あのすばるのごとく、あま
たの星の中でも群れのなかに埋没せぬ、凛然たる光を放つ存在でありたい
とな。星を見つめながら昌幸は言った。徳川内府につけば、わしは有象無
象の星の群れのひとつに過ぎなくなる。だが、男としてこの世に生を受け
た以上、一度は天上のすばるを目指さねばならぬ。いまこそがその時だ。
○力がすべてか。世には強いものになびかず、おのが誇りをつらぬく生き方
もまたある...父昌幸から受け継ぎ、みずからが辿り着いた思想を、身
を持ってしめそうとしていた。
○だが、幸村は希望を失っていない。戦というものは、何が起きるかわから
ぬ。最後の瞬間まで勝負を捨てぬ。それこそが、乱世をしぶとく生き抜い
てきた真田一族の真骨頂ではないか。
これからNHK大河ドラマ特別展「真田丸」が、江戸東京博物館や大阪城で開催されるそうです。上京の機会に、ぜひ観覧したいものです。