先日BSジャパンの番組で「歴史ロマン 関ヶ原の戦い・家康の決断~黒田長政・山内一豊・島津義弘の運命」が放映されました。
また今月13日に福岡市博物館で「関ヶ原戦陣図屏風を読む」講演会を聴講しました(9月18日のブログ)。関ヶ原の戦いにだんだん関心が深まったので、7人の作家の競作小説「決戦!関ヶ原」を読んでみました。

①葉室麟ら「決戦!関ヶ原」(講談社)
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②東軍の対陣・武将相関図から(出典:同書)
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以下、「決戦!関ヶ原」からアンソロジ-です。
・人を致して/徳川家康(伊藤潤)
家康の脳裏に人を致して人に致されずが浮かんだ(人を思うように動かし、人の思惑通りには動かない孫子の教え)。これまでは他人に致されてばかりの人生だったが家康は遂に致す立場に回ったのだ-もう誰にも致されぬぞ。
・笹を噛ませよ/可児才蔵(吉川永青)
戦場にて大切なものを手に入れた、心を貫く心棒という、これがあってこそ、それがしは自らの生涯を全うできそうです(井伊直政が命懸けで自らの信念に従っていたのに触れて)
・有楽斎の城/織田長益(天野純希)、信長の弟です
いずれ大坂の城は焼け落ちる。江戸城とていつか誰かに攻め落とされるかもしれない。だが私の茶の湯と茶室は世に残り続ける。それこそが私を嗤い続けた者たちへの最高の復讐ではないか。

③西軍の対陣・武将相関図から(出典:同書)
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・無為秀家/宇喜多秀家(上田秀人)
寝返った小早川秀秋を筆頭に家康方で戦った加藤家、福島家ら多くの大名が滅亡したなか、秀家の子孫は数百年を生き抜き、今に続いている。天下を定めた大戦の敗者が残り、勝者の血が消えた。長い歴史の中でどちらが勝者なのだろうか。
・丸に十文字/島津義弘(矢野隆)
元々、他所人(ひと)の戦と心得ている。我が方が敗北したという悔しさもなか。
・真紅の米/小早川秀秋(沖方丁)
(朝鮮出兵の)異国の地で秀秋は秀吉と豊臣家に対する深い失望を抱いた。この時の幻滅が、のちの秀秋の決断を作ったといっていい
・孤狼なり/石田三成(葉室麟)
(駈虎呑狼の策は三国志の逸話で、魏に仕える謀臣の荀彧が主君の曹操に提言したといわれる策。豹(上杉)に虎(徳川)をけしかけ、虎の穴が留守になった所を狼(三成)に襲わせるという毛利の戦略に対して)
駈虎呑狼の策は二頭の虎と狼が争っておれば、策を仕掛けた者の勝ちだ。しかし上杉は徳川と戦わず、徳川の前に立ちはだかった私はあっけなく敗れた。それゆえ、徳川はまだ敵を求めておる。狙われるのは毛利だ。
負けたのではない。自ら負けてやったのだ。関ヶ原の戦いは私(三成)だけでなく、徳川も毛利も負けた。勝った者などはいない戦だった。私は一匹狼だったが、孤狼には孤狼の戦い方があったということだ。

次の「決戦!大阪城」が待たれます。