勝負に必要なのは、いつでも
運でも才能でもなく“大きな覚悟”だ
勝負の世界には、よくこんな言葉がある。
「運がよかった」「あの人は才能が違う」──。
しかし、長く卓上に座っていると、はっきり見えてくる。
本当に勝ち続ける人間に共通しているのは、“覚悟”の深さだということに。
運は追い風のようなものだ。
たまたま風向きが合えば、誰でも進める。
才能は器。大きければ多くを受け取れる。
だが──。
舵がなければ、どんな風が吹いても漂うだけだ。
その舵こそが「覚悟」である。
風向きが変わろうと、潮が荒れようと、覚悟のある者だけが
目的地を見失わない。
ツキに恵まれた者ではなく、
ツキに頼らず進み続けた者が最後に残る。
勝負とは、運を待つものではなく、
覚悟で流れをつかみにいく行為なのだ。
勝負とは、リスクを受け入れる勇気の総量で決まる。
どんなに強い人でも、負ける瞬間は必ず来る。
だが、その時に“受け止める力”があるかどうか。
たとえば麻雀。
「ここで押すべきか」「引くべきか」。
誰もが迷う場面で、手が止まる人と、進む人がいる。
その違いは技術ではなく、覚悟の差だ。
リスクを恐れて打牌が鈍った瞬間、
もう勝負師ではなくなる。
結果を気にしすぎて、勝負を避けた瞬間、
その人の闘志は終わっている。
「負けてもいい」ではなく、「負けても進む」覚悟。
これがある者だけが、結果として勝ちを拾う。
人はよく言う。「あの人は才能がある」と。
だが、天才と呼ばれる人ほど、実は努力を“当然のこと”としている。
つまり、「努力する覚悟」を最初から決めているのだ。
勝負の世界では、結果が出るまでの過程が長い。
負けても研究を続け、夜中まで牌譜を見返す。
その繰り返しが、やがて“才能”と呼ばれるものになる。
覚悟とは、続ける力だ。
「勝つまでやる」と決めた者の前では、
才能の差すら意味を持たない。
凡人でも続けた者は、天才を追い越す。
なぜなら、覚悟だけは誰にでも持てるものだから。
ツキというものは、不思議だ。
勝ち続けている時ほど、なぜか運が寄ってくる。
だがそれは偶然ではない。
運を呼ぶのは、「負けても折れない心」。
つまり、覚悟の強さだ。
覚悟ある者は、ツキを待たない。
苦しい場面でも冷静に、淡々と最善を尽くす。
その姿勢が、いつの間にか流れを呼び戻している。
逆に、弱気になった瞬間、運は逃げる。
「次は勝てるだろう」と他力に頼る者から、
神様はそっとカードを引き抜いていく。
運とは、覚悟ある者の前にしか現れない。
運を信じる前に、自分の舵を握ることだ。
勝負の結果は、たった一瞬で決まる。
だが、その“一瞬”に至るまでの積み重ねが、すべてを左右する。
負けを恐れて逃げた一局。
勝ちに固執して視野を失った一局。
そのすべてが、次の覚悟を育てる。
「次は勝つ」と口にするのは簡単だ。
だが、「次こそ腹をくくる」と心で言える人は少ない。
それができた時、人は初めて強くなる。
覚悟とは、努力より重い。
才能より深い。
そして、運を超える唯一の武器である。
勝負の世界に、絶対の安全など存在しない。
どんなことでも、すべてはリスクを含んでいる。
だからこそ、“覚悟”だけが不変の武器だ。
今日、あなたが一枚の牌を切る時、
あるいは一枚の牌を伏せる時、
その決断の裏に、覚悟はあるか?
それが、勝負師とただの参加者を分ける境界線である。
卓上の紳士に必要なのは、いつでも
運でも才能でもなく“大きなぱい”だ
