昨日の夜
僕はじゃんけんで負けた
その瞬間から僕は僕ではなくなった


僕は鬼になったのだ
それはツノが生えるわけではない
それはいいパンツをはけるわけではない
それは桃太郎に倒されるわけでもない
ただ君を探すだけ

「もういいかい」
「もういいかい」

何度たずねても君に僕の声は届かない
そばに君がいるはずないのに
返事なんてあるはずないのに
何度だって叫んだ
「もういいかい」

次第に言葉は姿を変えた
「もういいよね」
「いいの?」
「いいよね」

そして僕は走り出した
君を探す旅へと出かけた

君はいない
もう君はいない
どこにもいない

いないはずの君を
ただただ探すだけの日々

いつまでも君に依存してしまう

本当はじゃんけんなんてしていない
君とは5年会っていない

でもじゃんけんをしたことにすれば
鬼になったことにすれば
君を探す権利を得られる
そんな気がした

気づけば僕は君の家の前にいた
何度もインターホンを鳴らし
ドアを叩き
君の名前を呼んだ

周りには人だかりができて
警察も来た

「君どうしたの?鬼のような顔して」

その瞬間から僕は鬼になった

これからも君を探し続ける

「もういいかい」