加古川市に着いたとき、まず感じたのは「空が広いな」ということだった。
川の流れが町の真ん中をゆったりと貫き、風が抜けていく。
どこか懐かしい景色に包まれながら歩いていると、地元の人たちの穏やかな笑顔が自然と目に入ってくる。
観光地として華やかな印象はないかもしれないが、この「肩の力が抜ける感じ」が加古川の一番の魅力だと思う。
駅から少し歩くと、加古川の河川敷に出る。
ランニングする人、釣りを楽しむ人、そしてベンチで本を読んでいる人。
そんな風景が、時間の流れをゆっくりにしてくれる。
休日の昼下がり、缶コーヒー片手にぼんやりと川面を眺めていたら、日常の雑音が少しずつ遠のいていく感覚があった。
少し足を伸ばして訪れたのが「鶴林寺」。
室町時代の建築で、国宝にも指定されている古寺だ。
境内は静かで、木々のざわめきが心地よく、まるで時間が止まったような空気が流れている。
歴史が積み重なった空間に身を置くと、不思議と背筋が伸びて、心の中も整理されていくような気がした。
街の中心部には昔ながらの商店街が残っていて、小さな食堂やベーカリーが軒を連ねている。
加古川名物といえば、やはり「加古川かつめし」。
ごはんの上にビーフカツを乗せて、デミグラスソースをたっぷりかけた一品。
初めて食べたときは「これは洋食なのか和食なのか?」と不思議に思ったが、ひと口で答えが出た。
ジャンルなんてどうでもいい。ただ、うまい。
肉の厚みとソースの深い味わいが絶妙で、家庭の味というより「地元のソウルフード」だと感じた。
他にも、地元の人が勧めてくれた「にくてん」というお好み焼きのような料理もある。
牛すじとこんにゃくを入れて、甘辛く仕上げた一枚。
これがビールにも合うし、夕方の一杯に最高。
地元の食文化には、観光地にはないリアルな日常の温かさが詰まっている。
自然を感じたいときは「日岡山公園」へ行くのもおすすめだ。
丘の上から町を見渡すと、加古川の流れと街並みが一望できる。
芝生広場では子どもたちが遊び、近くではジョギングをする人もいる。
特別なことをしなくても、ただベンチに座って風を感じるだけで十分満たされる。
散歩の途中で出会った地元の方に声をかけられ、「この公園、昔からあんたらみたいに遠くから来る人がおるんよ」と言われたのが妙に印象に残った。
旅の魅力って、観光名所よりもこういう何気ない交流にあると思う。
そして、旅の終盤。
ふと、家に帰ったら使わなくなったバイクのことを思い出した。
長年の相棒だったけれど、最近はあまり乗る機会がなくなっていた。
手放すのは少し寂しいが、状態が良いうちに次のオーナーへ渡すのも悪くない。
最近は「オンラインでのバイク買取価格の自動査定」という仕組みがあって、スマホから数分で大体の査定額がわかる。
忙しくて店舗に行けない人や、相場を知っておきたい人にはとても便利だ。
数字で見ると現実的な判断ができるし、何より「いま売るべきか」を冷静に考えられる。
旅で出会った静かな時間の中で、自分の持ち物を見直すのも悪くない。
加古川の穏やかな風景が背中を押してくれるように感じた。
手放すことは、少し寂しくても、新しい空気を迎え入れるための準備かもしれない。
そんなことを思いながら、帰りの電車でゆっくりと川沿いの景色を眺めていた。