転院の日は大晦日でした。
夫と私は、赤ちゃんを抱きかかえて病棟を後にしました。
1階ロビーに降りると、年末でガランとしていました。
会計窓口の先にある休憩コーナーに、3人の子ども達が見えました。
すると、子ども達も私たちの姿に気付きました。
3人がそれぞれ「わー!」と言って、駆け寄ってきます。
4歳の次女は、ニコニコとしながら両手を広げ「赤ちゃん!!」と言いながら跳ぶようにやって来ました。
次女が「ママ、赤ちゃん抱っこさせて!」と言い、自分の視線の高さに赤ちゃんを降ろすように言います。
長男、長女も私と次女の元に駆け寄り、あっという間にギュウギュウ詰めの状態。
子ども達は赤ちゃんに触れながら、
生きてるね。
暖かいね。
と、口々に言いました。
そうだね。
生きているね。
暖かいよね。
きっと、よんちゃんの時の記憶が残っているのだと思う。
だから、そう言ったんだと思う。
私も初めて触れた時「生きてる、暖かい。」って、思った。
子ども達がとても嬉しそうにしている様子を見た時、私は、
そうか、私は、この光景が見たかったんだ。
と、感じたのでした。
よんちゃんの時も、初対面の際、子ども達はとても嬉しそうに駆け寄って来た。
よんちゃんは冷たくて、動かなかった。
それでも子ども達は、
可愛いね。
と言って、それぞれに抱っこしたり、お世話をしたり、たくさん可愛がってくれていた。
もう、その光景がすごく残酷で、悲しくて、辛くて。
今、思い返しても涙が出てきてしまう。
だから、こうやって、子ども達に赤ちゃんとの別れがない、幸せな対面をさせることが出来て、本当に、本当に良かったと、心から思った。
私はしばらく、子ども達と赤ちゃんを触れ合わせた後、年末年始で当直体制の会計窓口で退院の手続きを行いました。
今回の入院は、出産一時金の範囲内に収まる予定との説明を受け、特に支払いをすることもなく総合病院を後にしました。
赤ちゃんを抱きかかえる私の周りを、3人の子ども達がまとわりついて歩きました。
みんなでワイワイ騒ぎながら、外に出ました。
久々に吸う外の空気。
この日は風が強かったけど、暖かい陽気だった。
とても心地良くて、光が眩しかった。
夫と子ども達と、病院に一礼をして家族で写真を撮りました。
無事に終わった。
一番の山場を超えた。
ここに来た時は、本当に怖かった。
子ども達と離れるのも辛かった。
子ども達も良く頑張った。
夫も、本当にお疲れさま。
このあと、かかりつけ医に転院だけど、今度は面会もそこまで制限は無いし、あと、数日で退院になる。
車に乗り込む前、駐車場から私たちが居た病室を見上げた。
駐車場側から見ると、中は暗くてはっきりと見えなくて。
数日前、子ども達は、この場所から小さな私を見つけて手を降ってくれたんだなと思うと、幼い子ども達の頑張りに、また、涙が出そうになった。
そして、今回、私が産後に過ごした病室の隣の部屋は、よんちゃんと3日間過ごした部屋だった。
その部屋にも目をやり、よんちゃんの事を思った。
2年前、あの部屋で過ごした期間。
本当に、本当に、辛かった。
よんちゃん。
きっと、あれからもずっと、私たち家族の近くでずっと見守っていてくれたんだよね。
ありがとうね。
駐車場でも、病室をバックに写真を撮り、私たち家族は、車に乗り込みました。
子ども達は
え、赤ちゃんも一緒なの!?
やったーー!!!
と、大喜び。
病棟で過ごしていた静かな時間は一瞬にして無くなり、ずっと、ずっと、騒がしい。
でもそれで、帰ってきたなぁと実感する。
赤ちゃんと過ごせるのは、あと数日先で、この日は20分程度の移動時間だけだけど。
とても楽しかった。
夫が運転する騒がしい車は、総合病院を出発しました。
たくさんの思い出が詰まった病院。
どんどんと離れていき、見えなくなった。
いろいろな事が進みだした。
よんちゃん。
よんちゃん、ありがとう。