出産から4日が経ちました。
出産の2日後には病院も年末年始の体制になり、病棟はのんびりとした雰囲気が漂っていました。
すっかり苦手意識を感じるようになった担当医の先生も、毎日出勤しなくなり、私も精神的に落ち着いてきました。
母子同室になって赤ちゃんと過ごす時間は、本当に穏やかでした。
でも、そんな時々に「よんちゃんの時は今ごろこうだったな」と思い出していました。
赤ちゃんの頭をヨシヨシと撫でて、よんちゃんの事を考えます。
よんちゃんは、ずっと動かなくて。
ふにゃふにゃの身体を抱っこしたら、丸くなった背中はひんやりと冷たくて。
授乳をしてみても吸い付かず。
冷たい唇が触れるだけ。
悲しくて、悲しくて。
身体はキツイのに眠れなくて。
あの時と同じ病院なのに。
何もかもが違った。
今、私が一緒に過ごしている赤ちゃんは、暖かくて。
スヤスヤと寝息をたてて眠っている。
いつ、どのタイミングで見ても変わらなかった、よんちゃん。
くるくると表情の変わる、赤ちゃん。
なんでかな。
なんで、よんちゃんは死んでしまったんだろう。
産後1日目、2日目は病室での時間を思い出した。
私以外、誰も音を立てない。
静かで冷たい病室。
病室でたくさん撮った、よんちゃんのニューボーンフォト。
何度も写真を見返して、生まれてきた赤ちゃんと似ているところを探した。
産後3日目は、よんちゃんの時は退院の日だった。
まだ身体は痛くて、今思い返しても、我ながら、こんな状態でよく退院したなぁと思った。
この日は、子ども達と夜遅くまで遊び通した。
よんちゃんとの思い出を、たくさん残して欲しかったから。
産後4日目の転院の日は、よんちゃんの時はお別れの日だった。
朝から子ども達と海に出かけた。
そして、昼にはお別れをした。
隣で眠る赤ちゃんを見つめながら、よんちゃんの事を思い。
こんなにも小さくて可愛らしい我が子を看取ったのか。
生まれてからお別れするまでこんなにも短い時間しかなかったのか。
そう感じた。
出産から、4日間。
よんちゃんとのお別れを経験しなければ、なんとなく過ぎ去っていった時間だと思う。
4日目にお別れをした2年前の私。
4日目に転院する今回の私。
同じ私、同じ病院なのに。
全然違う。
今回の転院は、お昼過ぎだった。
最後の昼食を終えて、家族の迎えを待つ時間。
赤ちゃんも眠っていて、私はぼーっと、窓の外を眺めていた。
この日の前日は夜から雨だったけど、朝には雨も上がっていた。
お日様の光で、木々の水滴がキラキラとしていて、とても美しかった。
晴れた空に、先日見かけた鳶らしき鳥を見つけた。
やっぱり、よんちゃんなのかな。
ずっと、見守っていてくれたんかな。
そう思っていたら、涙が出てきた。
その鳥は、その日も大きな翼を広げ、雄大に羽ばたきながら何処かへ消えていった。
午前中、病棟を歩いていたら担当医の先生を見かけた。
わ、今日、仕事なのか…
退院時に挨拶しないとだから、また避妊の話しされたら面倒臭いなぁと思っていたけど。
私が退院する時間帯には居なくなっていた。
(それはそれで、担当患者の退院なんだから、最後に声ぐらいかけてもいいんじゃないかと思ったけど…)
退院の前は、6年前にこちらで長女を出産して以来、縁がある仲良しの看護師さんとしばらくお話をしていた。
夫が来たタイミングで、お世話になった皆さんにお礼の菓子を渡し、病棟を出た。(ちゃんと担当医の先生にも用意した私は偉いと思います。笑)
今回の出産。
人生、5度目の出産。
ここに来るまで、本当にいろいろあったけど。
無事、元気な赤ちゃんを産むことができて本当に良かった。
総合病院での生活にも慣れてきて、転院、無理にしなくても良かったかなぁなんて思ったりもしたけど。
でも、最後の出産だし。
よんちゃんと一緒にしたかったこと。
生まれてきた赤ちゃんと、今、私はできている。
これは、この先もずっと続く。
赤ちゃんと一緒に、かかりつけの産婦人科に帰ります。
無事に産めた安堵感はもちろんあるけど。
幸せいっぱいかといったらそれは違うと思う。
赤ちゃんは今日も生きていて、暖かくて、可愛い。
総合病院での日々。
本当に、お世話になりました。