手術を終え、看護師さんに連れられた私達夫婦は、私の病室へと到着しました。
夫は看護師さんと嬉しそうに会話をしています。
一方、私はというと、相変わらず、眠気と震えにひたすら耐えていました。
すると、NICUの看護師さんが、
赤ちゃんを連れてきましたよー。
と、言い、生まれたばかりの赤ちゃんを連れてきました。
特に問題もなかったから、ここに連れてきてもらえたんだろうな。
と、思い、私もホッとしました。
しかし、私はもう本当に眠くて…
麻酔の影響で身体も全く動かないし、赤ちゃんの方をしっかりと見るとこすらできませんでした。
赤ちゃんは、夫が抱っこしているようでした。
夫がすすり泣く音が聞こえてきました。
あ、泣いているのかな…と、思いました。
そうだよね。
夫もずっと不安だったよね。
きっと、妊娠中からずっと、夫も不安だったと思う。
私はずっと安静続きだったから、家事育児の負担も多かったし、仕事もずっと大変だったから、本当によく頑張ってくれたと思う。
この日、夫がひとりで待っていたオペ室前の家族控室。
前回は緊急帝王切開だったから、どんなところかわからなかったけど。
無機質でだだっ広い控室だった。
前回は、明け方の静けさ漂う家族控室で、ずっとひとりで待っていたんだろうな。
病院についた時には、よんちゃんは既に亡くなっていた。
私も、危ないと言われていた。
バタバタとしている医療スタッフ。
なかなか終わらない手術。
彼は、どんな気持ちでその様子を見ていたのだろう。
彼は、どんな気持ちで私達を待っていたのだろう。
そして今回の手術は、どんな思いが巡っていたんだろう。
彼の涙にもまた、たくさんの思いが詰まっているんだろうな。
夫が、涙を拭いながら、赤ちゃんを私の枕元に連れてきてくれました。
でも、私はとにかく眠くて…
看護師さんからは親子3人の記念写真も撮ってもらったけど、本当に瞼が重くて。
「もういいや。」と、思って、目を瞑ったまま、写真にも映ってしまう程の眠気でした。
その当時の記憶を思い出しても、赤ちゃんの顔がどうだったのかは思い出せません。
ただひとつ、覚えているのは。
頬に触れる赤ちゃんが「温かい」という事だけで。
でも、その温かさが、本当に嬉しくて。
夫とお互い、口々に
生きてるね。
良かったね。
そう、言い合った事だけは、ハッキリと覚えています。