よんちゃんが亡くなってから、2年8ヶ月あまり。

妊娠37週1日のこの日。


ついに、私の人生4度目の帝王切開が始まりました。


ずっとずっと、この時を目標に頑張ってきた。

本当に、良く頑張ったと思う。


私も、家族も、周りで支えてくれた方々も。

みんなで手に入れたこの時だと思う。


ようやく、ようやく、生きた我が子に会える。




手術中は、オペ室の看護師さんと家族の話等をしていました。

きっと、私が不安にならないように気遣ってくれていたのだと思います。


看護師さんは、ずっと私の手をぎゅっと握り締め、話しかけ続けてくれました。




手術開始から10分位が経過しました。



なんとなく、周りの空気がピンとしてきて、会話をするのもはばかれるような雰囲気を感じました。


看護師さんと私の会話が途切れます。




すると、担当医の先生が、


もう子宮が固くなってて切るところないよ。

普通だったら、赤ちゃんはもうとっくに生まれてる頃なのに。


と、おっしゃいました。



それを聞いて私は、なんだかとても悲しくなりました。



私が看護師さんに、


癒着とかも酷いんですか?


と、たずねると、看護師さんは私のお腹の中を見ながら


そうですね、結構酷いですね…


と、おっしゃいます。



看護師さんも歯切れの悪い回答をしたので、私の子宮はよほど状態が悪かったんだと思います。



あぁ、今までの帝王切開では、癒着もなくてキレイな状態だったのにな…

ずっと下腹痛もあったから、癒着してるだろうとは思ってたけど、そんなに酷いんだ。




そう思っていると、お腹がユサユサ揺れだしました。



看護師さんが、


そろそろ生まれますよ。


と、声をかけてくださいます。




私も気持ちを落ち着かせ、その時を待ちます。








そして、







先生が、





はい。




生まれた。





男の子。



首1回。





と、言う声が聞こえました。



それに続けて看護師さんが生まれた時間を伝えます。

だいたい、手術開始から15分後でした。




よかった…


無事に生まれた。




性別もやっぱり男の子。



首1回ってことはへその緒巻いてたのかな。


無事で良かった…



と、思いました。




その直後、突然、私の視界に赤ちゃんがグイッと突き出されました。




お顔を見れたのは一瞬だったけど。



赤ちゃんは顔がくしゃくしゃで、ちょっと顔色が悪かった。


身体をヒクヒクとさせていました。





赤ちゃんは、すぐにNICUの看護師さんに渡されたようでした。





たぶん、赤ちゃんの顔を見せてくれたのは担当医の先生だったんだろうけど、なんというか、赤ちゃんを優しく抱いて連れて来るんじゃなくて、鷲づかみみたいにグイッと見せてきて。



待ち望んだ瞬間に涙は出ませんでした。




バタバタとした手術の流れで仕方ないのかもしれないけど、なんだか本当に、バースプラン云々は全くなくて、手術としての出産、みたいな感じでした。


もう私の子宮じゃ、仕方かなったのかな…




赤ちゃんが看護師さんの元に行ってからも、しばらく産声を聞くことはできませんでした。


私の視界から下半身を遮る布が邪魔で、赤ちゃんの様子を見ることが出来ません。



生まれて直ぐに産声が聞けず、不安でいっぱいでした。




看護師さんに、


赤ちゃん、大丈夫ですか?


と、たずねると、看護師さんは優しく


うん、大丈夫ですよ。


と、答えてくれました。





すると、



オンギャー



と、ようやく産声が。


 



良かった…



本当に良かった…




ずっと聞きたかった産声。





ここに至るまでの雰囲気等もあり、感動の涙は出なかったけど。



安堵の気持ちは非常に大きかったです。




でも、赤ちゃんは思ったほどたくさん泣かなくて。


途切れ途切れにしか泣かなかったので、やっぱりちょっと心配でした。




早く赤ちゃんの姿を見たくて。


布の向こうにいるであろう赤ちゃんの姿を、必死に探します。




看護師さんが、


大丈夫。

もうすぐ姿も見えますよ。


と言うと、ようやく、保育器に入った赤ちゃんの姿が見えました。



距離もちょっとあったし、さっき見たのも一瞬だったから、誰に似ているとかそんな事は良くわからなかったけど。



でも、でも。


元気に生まれてきたことがとても嬉しかったです。




赤ちゃんは、そのまま直ぐ、看護師さんに連れられてNICUへと運ばれて行かれました。



私は赤ちゃんに、


またね。


と、声をかけました。




良かった。


本当に良かった。



後は私の処置だけだ。



しばらく待っていると、担当医の先生が


はい、胎盤取れた。


と言いました。



私の胎盤、人生5回目の胎盤。



良く頑張ったね…


剥がれることなく、この日まで機能してくれてありがとう。


無事にその役割を終えることができた胎盤に、なんだか感謝の気持ちさえ湧き上がりました。




そう思っていると、担当医の先生から



めち子さん。

あなた、もう絶対に妊娠したらダメだよ。


次したら膀胱に穴開くよ。


と、厳しい口調で言われました。



私は、


はい、分かりました。

すみません…


と、答えました。



あぁ、凄く嫌だ。

なんだかめちゃくちゃ責められている気がする。


もう、その頃の私の心には出産の喜びはありませんでした。





麻酔科の先生が


じゃあ、そろそろ眠るお薬入れますね。


と、言います。



良かった。


もうこれ以上、担当医の先生からいろいろと言われたくない。

これで逃れられる…


そう感じました。




でも、なかなか直ぐに眠れなくて。



麻酔科の先生と私は


「先生、まだ眠れません。」


と、いうやり取りを2回程繰り返し。



そしてようやく、私は深い眠りについたのです。