診察室に入った私は、その場に立ち尽くして泣き続けました。
先生に「ありがとうございました」と「すみません」を伝えるのが精一杯でした。
先生も立ったまま、私にこう言ってくれました。
今回のことは、先生自身も私の様子(妊娠週数や痛がり方)等から陣痛だと思っていた。
(注、だからと言って病院がのんびり構えていたわけではなく、手早い段取りをしてもらっていました。かかりつけ医での滞在時間は10分くらいだと思います。)
ただ、エコーを当てたらエコー画面が白く映っており、すぐに常位胎盤早期剥離だとわかった。
心拍などから、赤ちゃんがしんどそうなのもわかった。
早剥は胎盤が端の方から剥がれることが多くて、そうなると出血もあるからすぐに分かる。
でも、私の場合は胎盤の真ん中から剥がれていたため、出血が無くて分からなかったのだと思う。
たぶん、痛みが出始めた午前3時ころから剥離が始まっていた。
そして先生は、「今回の件は、めち子さんも精一杯やれることはやっていたよ。だから、あの時こうしていたらとか、自分を責める必要はないんだよ。」と、言ってくれたのです。
ずっと、後悔をしてきた私。
先生の言葉にまた、涙がこぼれます。
先生は「こういう言い方は悪いかもしれないけど…」と言いにくそうに話して一旦うつむいた後、もう一度私を見て「僕はお母さんが助かって本当に良かったと思っているんだよ。」と言いました。
私は今までにも、何人かの人から同じことを言われていました。
でもやっぱり、私はよんちゃんの事でいっぱいで。
私の事はどうでもいい、そう感じていました。
しかし、先生からその言葉を聞いたとき、私は、きっと先生も、祈るような気持ちで私を救急病院に送ってくれたのだろうなぁと思ったのです。
医師であり、命を守らなくてはならない立場。
深夜の個人病院での常位胎盤早期剥離。
母子ともに危険な状況なのに、体制や設備上どうすることもできない。
そんな先生の思いを考えると、言葉の重みを感じました。
私は、ここの病院とご縁があり本当に良かったと、心から思いました。
私が今月末には職場復帰であると伝えると、先生はとても心配してくださいました。
どうにかできないのかと言ってくれました。
そして先生は、何度も、何度も、
「なにかできる事あったらいつでも言ってね。」
と言ってくれました。
実はこの先生、普段はあんまり話さないタイプなんです。
それなのに、こんなにたくさんの優しい言葉をかけてくださり、とてもありがたく感じました。
しかも死産から1か月も経っているのに。
ずっと心配して下さって…
私は、先生にお礼を言い、菓子を渡して診察室を後にしました。
先生、今まで本当にありがとうございました。
本当に大変なお仕事ですが、お身体、大事にしてください。
慣れ親しんだ病院を出て、車に乗り込みます。
また涙が溢れて出てきました。
声を出して、ひとりで泣きました。
そういえば私、この病院にひとりで来たの初めてだなぁ。
いつもはお腹の中に赤ちゃんがいたり、生まれたての赤ちゃんが一緒だったなぁ。
ひとりは、すごくさびしいよ。