「めち子さん!!手術終わりましたよ!」


ハッと、目を覚ました。


終わったのだ、何もかも。


ボーッとした記憶。

ベッドごと運ばれる私。

赤ちゃんのことは誰も何も言いません。


終わったのだ、本当に、何もかもが。



眠くて、キツくて、痛かった。


夫がやって来ました。

目を真っ赤に腫らしていました。


泣きながら「良かったね。」と言っていました。


何が、良かったのだろう。


何度も会話の途中に眠っていました。

全身麻酔の影響だと思っていました。


お腹を切ってみたら、赤ちゃん蘇生したとか無いかな、とか、僅かな期待もしていました。

でも、やっぱり誰も何も言いませんでした。


目が覚めては、夫とこれからどうすればいいんだろう、と話していました。

葬儀とか、火葬とか、知識がある訳ありません。

私も全身麻酔による帝王切開で身体的ダメージは大です。

誕生を楽しみにしていた他の子供たちにも伝えなくてはなりません。


こんな事、予想もしなかった。

どうすればいいかなんて、わかるはずない。

あと10数日後には、賑やかな生活を思い描いていたから。


ふたりで、途方に暮れていました。


何度も会話の途中で眠りについてしまう私。


どこかのタイミングで、夫がよんちゃんを連れてきてくれました。


初めて目にした我が子。

37週間、一緒に過ごしたよんちゃん。


とても、顔色が悪かったです。


あぁ、やっぱり、亡くなったのだ。


現実を、見せつけられたようでした。


まだ頭もボーッとしてて、身体もキツくて、しっかりと、見てあげる事ができませんでした。


よんちゃん、ごめんね。


でも、お母さん、これがいっぱいいっぱいだった。



夫によると、よんちゃんは、私のいる病室の隣の病室にいるということでした。

夫は、何度かよんちゃんに会いに行き、しばらく帰ってきませんでした。

私の元に戻って来るたび、目を腫らし、それでも笑顔で、写真見る?動画もあるよ。いっぱいお話してきたよ。と、言っていました。


夫のスマホに保存されたよんちゃんは、顔色こそ悪いものの、とても穏やかな顔で眠っていました。

第2子である長女によく似た寝顔でした。


夫が居ない時間帯、どこか別の病室から、女性の叫び声が聞こえて来ました。


私は、誰かが、分娩中なのかなぁと感じました。


しばらくそんな時間が続きました。


うつらうつらとした時間。


女性の叫び声の後、赤ちゃんの産声が響きました。


生まれた。


この子は、よんちゃんと同じ誕生日なんだなぁ。


無事に生まれて良かったね。


おめでとう。



出産とは、本当に、生と死が隣り合わせなんだなぁ。


まさか、私が、我が子が、こっち側の世界にくるだなんて、思いもしなかったよ。