小さい頃から可愛い顔をするのは得意だった
思った事をストレートに言っちゃう性格だけど
この顔をしとけばマイルドになる事も知ってた
友達と遊ぶのも好きだけど、真司郎と遊ぶ時が
1番好きだったな
だって、真司郎は嘘がつけなくて分かりやすい
から
例えばオヤツのケーキが2種類あった時
「どっちする？颯が先に選んでええで」
とか兄ちゃんぶってみるけど、その目は欲しい
ケーキを真っ直ぐ見つめてる
敢えて真司郎が欲しい方を指差して可愛い顔を
してみせるとあからさまに残念な顔になるのに
「コッチのが良かった？」
「え、ええよ！俺コッチ食べたかってん」
本当は食べたいはずなのに、優しいから嫌って
言えなくて悲しそうに俺がケーキのお皿を取る
のを目で追うんだ
好きなもの諦めようとする姿が、今とチョット
似てるよね
成長と共に言葉はキツくなったけど、それでも
真司郎の優しさは変わんない
もちろん、分かりやすいトコも…
だからね、顔を見れば何があったか全部分かる
颯「おかえり〜」
真「おぅ……」
それきり言葉が出なくなって転がってスマホを
いじる俺を黙って見つめてる
颯「なに？」
真「……あ、アレや…あの…」
颯「あの、なに？」
真「も、もぉ、長谷にちょっかいだすな！」
やっと、そう言うと緊張してるのバレバレな顔
して俺を見る
颯「うん、分かった」
真「へ？！」
颯「え、何？」
真「や…え？ほんま…ええの？」
颯「何それ？自分が、まいちゃんに秀太先輩の
こと構うなって言ったんじゃ〜ん」
真「や、そうやけど」
颯「じゃ、なに？」
真「何が…あったかとか…聞かんでええの？」
颯「興味な〜い、てか、何？もしかして話した
いの？（笑）」
真「ちゃうわアホ！///もう電気消すで！」
ドカドカ歩きながら教室の電気を消すと布団に
もぐる音が聞こえる
颯「真司郎…」
真「あ？」
颯「俺たち…ソックリだね」
真「は？似とらんやろ」
颯「えー、ソックリだよ」
真「似てへんわ！俺つり目でお前タレ目やん」
颯「見た目じゃねぇし（苦笑）」
真「性格も似てへんわ」
颯「そっくりじゃん…通じない相手に、片想い
してるとこ」
颯「千晃ちゃんには日高先輩…
俺なんて旦那いるし」
真「………」
颯「本当、ソックリだね俺たち(๑･∀･๑)」
真「一緒にすんな」
颯「あーあ、明日起きたら離婚してないかな」
真「不吉なこと言うなや！Σ(|||▽||| )」
颯「旦那なんか捨てちゃってさ…俺の事好きに
なってないかなぁ〜」
真「颯…」
颯「真司郎だってそう思うでしょ？」
真「アホか！お姉の不幸願う訳ないやん」
颯「違うって、千晃ちゃんとだかひー先輩だよ
好きな子が自分を好きになれば良いなって事」
真「アホか……それこそ無いわ……」
颯「ふ〜ん」
真「ってアホか、好きやないし！///」
颯「うるさいなぁ、もぉ眠いから寝る」
真「おいっ！///」
颯「あ、今度さ千晃ちゃん家で2人で遊ぶ約束
したんだけど真司郎も来る？」
真「は？！///」
颯「ま、嘘だけど」
真 「Σ(|||▽||| )」
颯「はぁ〜おやすみぃ(→o←)」
真「好き…ちゃうからな///」
颯「はいはい」
真「ほんま、あんなん何とも思ってへんし」
颯「夜更かしはお肌に悪いよぉ…」
真「千晃なんか、あんなんただのチビや」
颯「…ぅ〜ん」
真「聞けや！」
颯「zzz」
真「って早っっ！∑(๑°口°ll๑)」
あのね、真司郎…
真司郎だけだったんだよ
皆んながバカにしたみたいに笑う中
真司郎は…真司郎だけは笑わなかった
真司郎だけは真剣に聞いてくれたんだ
「ママ…これ…」
「ああ、届いた？見せて見せて〜
うわぁキレイねぇ〜」
「…結婚…て…」
「そーなのよ、この間電話来て言ってたのよ
式とかしないから写真で報告するって
やぁ〜、それにしてもキレイねぇ」
「何で…」
「ん？」
「だって…結婚するって…」
「？」
「結婚するって…俺と…
俺と結婚するって言ってたじゃん！」
「あ〜あははは（笑）そう言えば昔よくやって
たわねぇ結婚ごっこ」
「……………」
「颯ったら、真ちゃんたちが遊び来るたんびに
お姉ちゃんにくっついて結婚するって言って」
「……………」
「懐かしい、よく覚えてたね？」
「は？従兄弟の姉ちゃん結婚したから元気ねぇ
とか何それ（笑）」
「俺と結婚する約束してたのに」
「30でしょ？その姉ちゃん」
「まだ29だよ」
「変わんねえよ（笑）」
「変わるし、まだ20代だから近いし」
「いやいや、そんな大人が高校生なんか相手に
する訳ねえし（笑）」
「てか、したら犯罪になんじゃね？
ほら、この間お笑い芸人が未成年淫行とか
言われてたじゃん」
「あー、やってたやってた（笑）」
皆んなが笑ったこの想いをね、真司郎だけが
ちゃんと受け止めてくれたんだよ
「ほんま…辛いやんな…好きな女が他の男に
幸せにされるんは」
いつだって傍にいてくれる
いつだって俺を理解してくれる
いつだって大好きな俺の兄ちゃん
な～んて、絶対言ってやんないけどね？
（笑）
でもさ…俺もね、ちゃんとケジメつけるよ
ちゃんと、前向くよ
次に会った時、ちゃんと「結婚おめでとう」
って言ってやるよ
得意の可愛い顔しながらさ
「え、ええよ！俺コッチ食べたかってん」
「ふ〜ん(´･ω･`)」
「………இ_இ」
「じゃ、半分こしよ？」
「え？！///」
「そっちも食べたい」
「おお！ええで！俺もそっち食べたい」
「真司郎切って〜」
「しゃあないなぁ〜」
