アンドレス・メナ内野手のトライアウト結果のお知らせ&スペシャルインタビュー | 欧州野球狂の詩

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日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 去る10月31日から11月6日まで、グローバルベースボールでは野球フィンランド代表のアンドレス・メナ=ゲラ選手(30)に対する、BCリーグ合同トライアウト受験の支援活動を行いました。残念ながら、本トライアウトでは奮闘むなしく一次試験にてあえなく不合格となってしまいましたが、初めての来日と日本でプロ野球選手になる為の挑戦をするという夢を叶えることが出来、本人は結果を悔しがりながらも納得している様子でした。

 

 今回は日本滞在中、そんなメナ選手と交わした会話の数々を本人了解の上、一本のインタビューとしてまとめてお届けしたいと思います。日本にやってきてから感じたことはもちろん、これまで生きてきた人生の中で見聞きしたことなどもお届けしたいと思っていますので、楽しんでいただければ嬉しいです。

 

―:まずは自己紹介をお願いします。

メナ(以下メ):ヘルシンキ・ピューマに所属するアンドレス・メナ=ゲラです。1987年1月11日生まれの30歳で、ポジションは内野手。基本はショートだけど、内野ならどこでもやるよ。元々はキューバ生まれだけど、元カノがフィンランド人だった縁で2011年からフィンランドに移住していて、今はジェルリン・マリアという3歳の娘とともにヘルシンキに住んでます。

 

―:今まではどんなチームでプレーしていたの?

メ:僕はビジャクララ州の出身で、キューバ時代には世代別の国内リーグで地元のチームに入っていたよ。キューバの世代別代表にも選ばれたことがあるんだ。ヨーロッパではフィンランドで3チームを渡り歩いた。2ヶ月だけだけど、エストニアのクラブにいたこともあるよ。

 

―:ビジャクララ出身の選手と言うと、日本ではダヤン・ビシエド(中日)が有名なんだ。彼のことは知ってる?

メ:もちろん知っているよ、同郷だからね!!年齢的にも近かったんじゃないかな(筆者注・ビシエドの方が2歳年下です)。日本でプレーしているキューバ人といえば、やっぱりアルフレド・デスパイネ(ソフトバンク)だよね。彼はまさに英雄だと思うよ。

 

―:そんな君が、日本でプレーしたいという思いを持ったのはどういう経緯があってのことなのかな?

メ:キューバにいた時から日本野球のことはよく知っていて、いつかは自分もプレーしたいという思いをずっと持っていたんだ。日本はとても野球が強い国、そこでプレーするのは僕のあこがれだった。僕にとっては、MLB以上にNPBでプレーするのが夢だったんだよ。

 

少し現実的な話をすると、フィンランド国内の野球環境にも自分は満足していない。まず、SMサージャ(フィンランド国内リーグ)は試合数が少なくて、年間に1チーム当たり16試合(計5チームが所属し、4試合総当たりで戦う)しかプレーできない。それに、そもそも野球自体がアイスホッケーやペサパッロ(野球をフィンランド式に改良した競技で、同国の国技)と比べて小さなスポーツで、あまりコンペティティブな環境とは言えないんだ。試合に対する取り組みもそう。勝てばもちろん皆ハッピーなのはいいけど、逆に負けてもそんなに悔しがらないんだ。実際、そういう環境に不満があって辞めてしまったアメリカ人選手もいるよ。凄く上手い奴だったから残念だけど、その気持ちはよく分かるんだ。

 

自分のやっているスポーツに対する愛情は、どんなアスリートも常に忘れてはいけないと思う。もちろんSMサージャの選手たちもその点では決して負けていないと思うし、中にはいい選手もいるよ。でも同時に、さらに高いレベルを目指したいというハングリー精神も忘れてはいけないんだ。自分はより高いレベルに行けないと思った時点で、自分自身の成長は止まってしまうからね。

 

―:僕ら日本人の野球ファンにとって、フィンランドの野球はまさに未知の領域なんだ。例えば、SMサージャでプレーしている投手はどれくらいの速球を投げるのかな?

メ:球速で言うと大体87~88マイル(約140~141キロ)ってところかな。それと国内リーグには参加していないけど、フィンランド代表には1人だけ90マイル(145キロ)を投げる奴もいるよ。

 

―:実は君が来日する前にSMサージャの所属選手を調べてみたんだけど、外国人選手の出身国が凄く面白いなと思ったんだ。アメリカやベネズエラ、キューバやオーストラリアといった国々は日本でも馴染みがある。でも、フィンランドではエストニアやラトビアのような、あまり他ではお目にかかれない国の選手もいるよね。インド代表の選手(クマール・ナレンデル外野手/テンペレ・タイガース)がいると知った時は、流石に驚いたよ!!

メナ:あぁ、面白いだろ?彼はペサパッロをたまたま母国で見たらしくて、それをやってみたいと思ってフィンランドに来たんだ。それで、こっちでは野球のリーグでもプレーしているのさ。インドの野球選手が遥々フィンランドまでプレーしに来るって、なかなか興味深いよね。

 

―:君もキューバ出身で、フィンランド移住というのはなかなか簡単な決断ではなかったと思うけど。

メ:そうだね。実は他のキューバ人選手と同じように、僕もフィンランド移住に際しては亡命という形を採っているんだ。だから、今母国に戻っても僕がキューバでプレーしていた頃の公式記録は抹消されている。非常に大変な決断ではあったけど、キューバという国の体制にも正直言って不満は色々とあったしね。

 

―:キューバとフィンランドでは言葉も全く違うよね。適応するのは大変だったんじゃないの?

メ:めちゃくちゃ大変だったよ(笑)。フィンランドには移民向けの語学学校があるんだ。国籍を取る為には、やっぱりフィンランド語が話せないといけないからね。最初はチンプンカンプンだったけど、2年目以降は少しずつ話せるようになった。今はキューバとフィンランドの二重国籍なんだ。もう何だかんだで6年いるから、現地の人たちとはもちろんフィンランド語で会話しているよ。たまに向こうからは英語で話しかけられることもあるけどね。

 

―:娘さんとは何語で話してるの?

メ:スペイン語とフィンランド語を織り交ぜている。彼女はスペイン語は話せないけど知識はあって、僕の言っていることは分かるんだ。だから、僕からはスペイン語で話しかけて彼女からはフィンランド語で答えが返ってくるのさ(笑)。

 

―:娘さんも二重国籍なの?

メ:いや、ジェルリンはフィンランド国籍だけだよ。その気になればキューバ国籍を取らせることもできるけど…、僕にはその意思はないね。

 

―:話を野球の話題に戻そうか。今回、君が日本に来るにあたって自分を選んでくれたのはどういう経緯だったの?(筆者注・今回のプロジェクトはメナからのアタックにより実現しました)

メ:日本でプロリーグのトライアウトがあるという情報を聞きつけて、それに是非自分も参加したいと思った。でも自分は日本語が分からないから、手伝ってくれる人を探そうとFacebookで助けてくれそうな日本人を探った。そうしたら君(筆者)を見つけたんだ。実は君と活動を始めた後になって、在欧の日本人エージェントから声がかかった。でも、先に協力者を見つけていたからそのルートは断ったんだよ。

 

―:実際、今回トライアウトや自主練習に参加してみてどう思った?

メ:今回こういう経験が出来て、とてもよかったよ。やはり日本の野球はレベルが高い。それに、助けてくれた皆の働きも素晴らしかった。結果は残念だけど感謝しているし、自分の最善を尽くしたからハッピーだよ。

 

―:フィールドの内外を問わず、日本を楽しむことは出来たと思う?

メ:あぁ、本当にそう思うよ。でも、日本での挑戦をこれで終わりにはしたくない。チャンスがあれば、社会人のクラブチームでプレーさせてほしいと思っているんだ。自分が日本のクラブでプレーを続けていれば、フィンランドの仲間たちにも「俺たちにももっと高いレベルにチャレンジできる可能性があるんだ」と感じてもらえるからね。もし少しでも可能性があるなら、それを掴むために努力は惜しまないよ!!是非よろしくお願いします。

 

―:日本の野球ファンにメッセージをどうぞ。

メ:今回の来日は、とても素晴らしい経験になった。皆が助けてくれたおかげだよ。本当に心から感謝したい。また近い将来、再び日本に戻ってこれる日が来ることを願っています。ありがとうございました。

 

 今回自分たちが支援したアンドレ・メナ内野手は、「BCリーグトライアウトに合格しフィンランド初のプロ野球選手になる」という意味では残念ながら夢破れてしまいましたが、引き続き日本でのプレーを希望しています。もしクラブチームのセレクションの情報などありましたら、globalbaseball532@gmail.comまでお寄せいただきましたら大変ありがたいです(もちろん自分たちの方からも探しに行きます)。外国人選手ということで色々苦労はあるかと思いますが、今後とも同選手に対する温かいご支援のほどよろしくお願いいたします。