Numberの記事に抗議の意を表します | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 正直言ってこういうことは俺としてもやりたくないのですが、これについては思わず言わずにはいられなかったということでご理解いただければ幸いです。


 昨日、Number誌がこのような記事を彼らのWebサイト上で公開しました。


侍ジャパンは「日の丸」の無駄遣い!?興業ありきの試合に発展の道はない

http://number.bunshun.jp/articles/-/822791


 これに対して、下記の通り抗議するとともに内容の即時撤回を要求する内容の文章を送ったので、読者の皆さんにも公開しようと思います。


 貴社の鷲田康氏が執筆された「侍ジャパンは日の丸の無駄遣い!?興業ありきの試合に発展の道はない」を拝読しました。率直に申し上げて、この記事に書かれている内容には一切同意できません。


 私は2010年より、「欧州野球狂の詩」というブログを通じて欧州球界にまつわるあらゆる情報(リーグ戦の結果速報、選手移籍情報、新球場建設などの各種大規模プロジェクト、独自視点でのコラムなど)を発信し、おかげさまで6年間多くの野球ファンの方々に欧州野球関連の情報発信基地としてご利用いただいてきました。2012年にはNPO法人国際野球支援団体ベースボールブリッジを立ち上げるとともにその代表に就任し、自ら国際的な野球発展のための活動にも携わってまいりました。今回の日欧野球絡みでも、NPBさんや博報堂さんなどから直々に依頼され、侍ジャパン公式サイトでも記事を書かせていただいております。


 文章中では、「欧州代表の選手たちは目玉となる大リーガーがいるわけでもなく、普段は大工をやっているようなセミプロばかリ。魅力にも本気度にも欠ける」とありましたが、そもそも今回の試合は「普段マイナースポーツとして欧州諸国でプレーしている選手たちに、自分たちの世界の中での立ち位置と野球大国の空気を肌で感じてもらう」ことを目的に行う物であり、最初から大リーガーの招集を日本側としても想定してなどいません。この目的に照らして考えるならば、大リーガーの招集はむしろ意味がないものであるからです。


 今の世界の野球界(それは日本とMLB以外の世界も含めての話です)が目指しているのはズバリ国際化であり、これまでは列強として見なされてこなかった欧州やアフリカ、中東などの新しいマーケットの発掘です。今回の試合もその大きなビジョンの下に開催されるのであって、決して無意味なものでも日の丸の無駄遣いなどでもありません。「世界との戦い=大リーガーを擁するチームとの対戦」という時代はとっくに終わっているのです。むしろ、仮にも日本を代表するスポーツ専門紙である貴社のような媒体が、そうした時流を読む能力に全く欠けていること、マクロ的な視点に立った記事を執筆し発信できないことに心底危機感を覚えます。


 私は記事中で「普段は大工をやっているような」と触れられている、欧州リーグの選手たちとも直接繋がりがあり、今回の試合開催にあたっても本人たちに対して取材を行っていますが、この試合を取るに足らない単なる親善試合や興業と捉えている者などただの1人もいません。彼らにとっては、ずっと世界屈指の野球大国として君臨しながらも代表戦の文化が定着しなかった日本とやっと対戦できることは、彼らにとってメジャースポーツとしてのブレークスルーを果たす絶好の機会であり、叶わないはずだった夢だからです。そうした思いを黙殺するばかりか、MLB傘下の選手ではないという肩書だけを理由として、ろくなものではないと片づけてしまう論調には激しい憤りを覚えます。


 私は過去6年間、ブロガーとしての活動を通しては一切の収入を得ることなしに現地との人的ネットワークを築き上げてきました。残念ながら、資金的な問題からいまだに現地取材に行くことは叶いませんが、それでも非常に多くの関係者に信頼頂きこのたびのNPBさん他からの仕事も請け負うまでになっております。しかし、鷲田氏をはじめ貴社のライター諸氏は皆れっきとしたプロではないのですか。サッカー関連の記事を担当されている方など、実際に現地にも渡航されているケースも少なからずあるはずです。であれば、何故鷲田氏は欧州の選手たちの話を直接現地まで聞きに行かれなかったのか。プロのスポーツライターにとっては通常業務の範疇ではないですか。それを怠ったまま、一方的に日本側の都合だけを書きつづっただけの記事を配信されることを私は看過できません。


 今回の記事に対して断固として抗議するとともに、掲載されている内容については即時撤回を強く求めます。セミプロとはいえシーズン前の重要な時期であることは、欧州側にとっても全く同じです。それでもこの試合に大きな意地を感じ、片道10時間以上のフライトをこなして来日してくる彼らに対する最低限のリスペクトを、この記事は全く欠いていると言わざるを得ません。この記事を朝から拝読しなければならなかったことが非常に残念です。率直に申し上げて失望しました。


 自分が言いたいことはこのコメントの中にあらかた含めているので、この場で付け加えることは特にありません。たとえどのような試合であれ、対戦相手にも最低限のリスペクトを払うことはどんなスポーツにおいても全く同じはず。そのごく基本的な視点を、こともあろうにNumberというスポーツ専門誌が欠いてしまっているのは残念と言わざるを得ません。野球界が国際化という新しいパラダイムにシフトしようとする中で、日本国内のメディアも早くそうした視野に立って報道を行えるようになることを心から願います。