Dear my best friend. | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 おそらくこの記事は、「欧州野球狂の詩」の読者の皆さんがこのブログに期待している内容ではおそらくないだろう。それでも、今日だけはどうかその期待を裏切ることを許してもらいたい。なぜならこれは、今日を逃したら書くことができない文章なんだから。


 今日、俺は過去10年間一緒に暮らしてきた最高のパートナーを失った。ゴールデンレトリバーのレオ、享年10歳。先月頃から呼吸器に異常をきたすようになって、外科手術も施したけど根本的な解決には至らなかった。来月の6日には11歳の誕生日を迎えるはずだったあいつは、昨日の夜に突然容体が急変。今朝、手術をしてくれた都内の動物病院に行ってきたばかりだった。いったん帰宅したものの自力歩行もままならず、やむなく近所の別のかかりつけの病院に預けた。急変を告げる電話がかかってきたのは、その1時間ほど後のことだっただろうか。


 病院に駆け付けた時、あいつは既に自力で呼吸することはできない状態だった。その時にはもう、俺やいっしょにいた母親の呼びかけにも全く答えないまま。休診日にもかかわらず、待機してくれていた獣医師の先生が懸命に人工呼吸をしてくれたけど、努力及ばず。俺の目の前で、あいつは静かに息を引き取った。


 愛犬の死に直面してから2時間ほどたった今でも、俺はまだ涙は流していない。でも、正直悔しいし心残りだ。あいつと出会ってからの約10年、俺はずっとかけがえのない存在としてあいつを可愛がってきた。毎日朝と晩は一緒に散歩に出かけ、その後には餌をやり、夜には一緒にソファに寝そべって野球やサッカーのテレビ中継を見たりもした。俺にとっては大切な友人であり、決して捨てることのできない宝物であり、何物にも代えられない一番大事な相棒だったんだ。


 でも時が経つにつれて、いつぞやあいつと一緒にいる時間は俺にとって当たり前のものになっていた。大学に行き、ブロガーとしての活動をはじめ、卒業後に就職を果たし、ベースボールブリッジの一員としても動くようになる。どんどんライフステージが変わるごとに、知らないうちに以前と比べてあいつと一緒にいられる時間は、相対的に短くなった。もちろん、俺の中であいつの存在価値が変わったわけじゃ全くない。ただ、同じ時間と空間を共有していることが、あまりにも「当然のこと」になりすぎていたんだ。


 そんな時にこの突然の別れ。正直言って後悔せずにはいられない。もっと俺は一緒にいてやれたかもしれない、もっと可愛がってやれたかもしれない。今だから懺悔するけど、大学で疲れているからと散歩のコースをショートカットしたのだって一度や二度じゃないんだ。本当に俺はこんな飼い主でよかったのかと振り返ってみると、どこか甘えていたところがあった自分自身が悔しくて仕方がない。


 でも、そんな俺のことをあいつは心から信頼してくれた。他の誰よりも懐いてくれて、外出先から帰ってくれば大喜びしながら玄関まで「おかえり」と出迎えに来てくれて。俺がへまをやらかして親父に叱られていた時は、俺のことを守ろうとじっとそばにいてくれていたこともあったっけ。自分では言葉は話さないけれど、こちらの考えていることや話している言葉は瞬時に理解してくれた。いつだって明るくて、人懐っこくて、天真爛漫で…。理想的な飼い主とは決して胸を張っては言えない俺を、あいつは全身で受け入れてくれたんだ。


 そんなあいつとの永遠の別れは、いつか必ず起こることと覚悟はしていた。正直、今日この日であってほしくはなかったけれど。でも、向こうに行ってしまったあいつには今こそ、心からの感謝と手向けの言葉を送りたい。無味乾燥なネットの上での数行だけど、きっと届くと信じてるよ。魂は遠くに離れてしまっても、俺たちはまだ同じ空の下できっとつながってると思うから。


 なぁ、そっちの世界にはもう慣れたか?ここ最近は、一緒にいる時でも前みたいにちゃんと可愛がってやれなくてごめんな。もっとお前とは一緒にいたかったし、11回目の誕生日だって祝ってやりたかったよ。それが叶わなくて本当に残念だし、悲しく思ってる。多分、そう簡単に立ち直れることはないと思うけど、俺はこの悲しみさえも受け入れて、また前に進み続けるよ。


 俺にはまだ、この地上では山ほどやり残していることがある。だから、当分の間はそっちに行くわけにはいかないんだ。でも、いつかなすべきことを全部やりきったら俺もお前の所に行く。その時は絶対にお前に会いに行くから。また前みたいに、心行くまで思いっきり遊ぼうな。約束だぞ。うちに来てくれてありがとう。いつも皆を笑顔にしてくれてありがとう。そして、10年間俺の最高の親友の1人でいてくれて、本当にありがとう。今までお疲れ様。それじゃ、またいつかそっちでな。