吹き荒れるオレンジ旋風、スーパースターの胸中は…。(前篇) | 欧州野球狂の詩

欧州野球狂の詩

日本生まれイギリス育ちの野球マニアが、第2の故郷ヨーロッパの野球や自分の好きな音楽などについて、ざっくばらんな口調で熱く語ります♪

 「間違いなく、ベスト4争いには食い込んでくるチームだ」

 「警戒に値するだけの力はあるね」


 2013年WBC開幕前夜の3月5日に行われた、各国の監督記者会見。アメリカ・ジョンソン監督、キューバ・べレス監督が異口同音に語った言葉は、過去2大会の覇者・日本だけに向けられたものではなかった。


 オランダ。


 前回2009年大会で優勝候補・ドミニカ共和国を2度破り、世界中の野球ファンを驚嘆させた、あの「サンファンの奇跡」から4年。欧州のオレンジ軍団への国際的評価は今や「Underdog(負け犬)」から「Powerhouse(強豪)」へと180度様変わりしている。


 この4年間、彼らの国際球界における成長には目を見張るものがあった。09年WBCでの大健闘に続き、同年行われたIBAFワールドカップでは、欧州勢過去最高の6位入賞。そして2年前、2011年に行われた同大会で、見事初優勝を飾ってみせたのだ。日本や米国といった列強諸国からトッププロが出場しない、実質的なアマ大会とは言え、欧州諸国で初めての栄誉は評価に値する。


 その時のチームをベースとした今回のオランダのスクワッドには、6人のメジャーリーガーが合流する。投手陣には、前回大会でも先発として活躍したリック・バンデンハーク(マーリンズ)と守護神レオン・ボイド(ブルージェイズ)、前回不参加組からは、ジャイアー・ジャージェンス(ブレーブス)とシャイロン・マルティス(ナショナルズ)。ボイド以外の3人は、いずれも所属チームでは先発3本柱に食い込んでおり、特にブレーブスのエースでもあるジャージェンスには柱としての期待がかかる。


 そして、前回得点力不足に泣いた打線にも、ロジャー・バーナディーナ(ナショナルズ)とグレッグ・ハルマン(マリナーズ)の2人が名を連ねる。特にハルマンは、昨季打率.278、25本塁打91打点に24盗塁を記録。今やホセ・ロペス(ベネズエラ)と並ぶ、マリナーズの中軸として欠かせない得点源に成長を遂げた。前回大会では絶不調だった彼が、持ち前の長打力をチャンスで発揮できれば、少なくとも6試合でわずか9得点しかできなかった前回の二の舞にはならないだろう。


 出場国数が24カ国に増え、欧州からも新たにドイツ、スペイン、イギリス、イスラエルが加わった今大会。今までにまして存在感を感じさせる「第3勢力」の先頭で、常に彼らの目標となってきたのがオランダだった。列強からも名指しで警戒される存在になった今、オランダ球界にとっての今回のWBCは、真の強豪国へと脱皮するための、非常に重要なステップになるはずだ。