ネットを通して、人と人が出会う機会が増えたのは、いつ頃からだっけ?
ここでは、相手の表情も声の調子も目には見えない。見えない分、相手の発する言葉の中から信用する為の材料を少しずつ集めていかなければならなくなる。相手もまた同じように思っているんだろう。
一体、どれだけの材料を集めれば相手を信用していいのか。
もっとも、いつも顔を合わせている現実のダチにしても、俺自身が知っているのはそいつの全体の何割にもならないのかもしれないんだ。どんな顔をしているのかすらわからない人間を信用しようとする事自体が馬鹿げているのかもしれない。
けど、一度も会った事もない相手にだって、仲間意識ってのは芽生えるもんなんだ。
3.ギルド
高台から街を見下ろしていた。穏やかな音楽とともに噴水の水が勢い良く吹き出している。レンガ作りの建物が並ぶ町並みの向こうは、山脈らしきものが見える。
どこを向いても山に囲まれた村、カーニクル。首都と呼ばれるローランドから、旅慣れたプレイヤーが歩いて来ても一時間はかかるような辺鄙な場所のせいか、ここから見える人陰は数えるほどでしかない。V・Iの中でも一、二を争う不人気スポットだ。
一目で熟練者とわかるでかい大剣を背中に下げた戦士、ふわふわと宙を浮きながら店から店を移動している魔法使い。どれも相当ゲームをやり込んでいるとわかる。こういう連中しか、ここには辿り着けない。
寄りかかった木の手すりのすぐ横には素性の知れない太ったオッサンの銅像が鎮座していた。一体、どんな設定でこんな物がここにいるんだか。
本日、俺は例によってプロデューサーの連絡待ち。こういう辺鄙な場所に呼ばれる場合、ほとんどはロクな依頼じゃない。飲み会続きで財布が寂しくなければ、丁寧にお断りしているところ。
しかも、自分から呼んでおいてまたもや返事がない。いつも思うんだが俺の忍耐力でも試しているんじゃねぇだろうな。