ざく。
暑い。
ざく。
俯いて穴を掘ってると、
汗が目に入ってくる。
なんかさっきから
左手痒いんだけど、
確実に蚊に食われてるし。
白骨を埋めて隠すのに、
どれくらい掘ったらいいのかわからない。
だいたいシャベル小さすぎるし。
時々、
頭上でガサガサと音がする。
何かいる。
蝙蝠とか、そんなの。
だと思いたい。
山にいる霊とか、
怨霊とか、
座敷童とか、
地縛霊とか、
ぜってーそんなんじゃねーし。
恐いとかそんなのより、
あいつ守んないと。
ぜってー今だって
死んだ目で
星空を見つめてるだろう。
時々見せる、
あの何もかもが
くだらないと言ったあの顔で。
だから、
大丈夫だって、
ものすげー深いところに
埋めたから、
絶対見つかんねーって、
言ってやらないと、
壊れるかもしんない。
だって
いつもいつも
ギリギリのところで笑ってる。
誰よりもクラスに溶け込んでるフリして、
誰も必要ないと思ってる。
自分すらも。
……自分すらも。
穴はだいぶ深く、
大きくなったような気がした。
試しに一番お大きな二の腕の骨を
入れてみる。
まだ掘った方がいいな。
腰骨とか足の骨とかの方が
大きいと思うけど、
他の骨は小さい破片になってた。
頭蓋骨も。
あーあーもう。
暑いし、
痒いし、
恐いし。
俺こんながんばってるけど、
あいつ感謝してくれっかな。
やらせてくれとは言わないけど、
キスぐらいさせてくんないと
割が合わねー気がする。
はー。
やらせてくんねーかな。
……無理か。
なんてお人よしなんだろ、俺。
いいヤツだよな。
俺。
あいつは認めてくれそうにないけど。
とりあえず、
恐さと疲れと痒さを紛らわせるのに、
純を相手にありとあらゆる
妄想をしてみた。
快楽に寄せられる眉とか
濡れた舌が覗けるほど開けられた口とか
止めてくれと懇願する眼とか
掘るスピードが格段に増した。
玲ちゃん、何してんの、あんた。