小説ONESTAR番外編
「ヨッシー、今すぐ準備して。」
「来た?マジで?ナツキもいっしょ?」
「ナツキ?」
「ねーちゃんのバイトしてる店のウェイター。」
「あの超カッコいい人がそうなら、来た。でも、なんかモメてるみたい。」
「モメてる?」
「いいから、すぐ始めて。あたしが命に代えても連れてくから。」
「命に代えても?おまえ、大ゲサ……」
「昨日寝てないんでしょ?カッコいいとこ見せて。そんで全米デヴューして。」
あんたは、貫いてよ。
あんたのONESTARを、
追いかけ続けて。
それが、たとえ、
過ちであろうとも。
「おまえ、」
ヨッシーがあたしを呼ぶ。
何回名前で呼べと言ったらわかるのかしら。
「ねーちゃんの次にいい女だよ。」
電話を切る。
目の前では、走っては来たものの、やっぱりあたし…とモジモジしてるヨッシーのお姉さんと、さっき顧問が客入れは終わったとばかりに受付を片付けてしまったので、どうやって入るの?と戸惑ってる店長さんがまごまごしてる。
そして、
「あーっ!ねえ、彼女!ライブ会場ってそれ?」
とあたしの後ろを指差すナツキ。
大きな目と日に焼けた肌、肩下までありそうな長めの髪を無造作に後ろで束ねてる。
どこか少年じみた痩せた身体が、幼さを漂わせて、
一体いくつなの?って感じ。
その上、あの顔。
たぶん、このまま体育館に入ったら、
スカウトマン達は、この人をスカウトするんじゃないだろうか。
それくらい桁違いだ。
「ええ、急いで下さい。もう始まりますよ。」
にっこり。
笑って見る。
ってか、命に代えてもってどうやって連れて入ろう。
「ほらー、ここじゃん。行こーぜ。」
「あたし、ここで、」
「何言ってんの、ここまで来て~。」
「そうだよ、トモミちゃん、3人で来てくださいってヨシアキも言ってたし。」
「あの、ナツキさんと店長さんお二人で……。」
3人でモメてる間に、後ろでは、嬌声が響き渡る。
緞帳が上がったらしい。
リュージが拘ったと言う音が、大音量で聞こえて来た。
始まっちゃった!