小説~ONESTAR番外編~
ヤバいっ!!
と思った瞬間、
あたしを制して、
ヨッシーがあたしの前に出た。
「……いい根性だよなあ。」
いい根性過ぎる。
殴られたらどーすんのよ。
あんた今日、寝らんないほどカッコつけて、
あの人の為だけに歌うんでしょう?
ああ、もう!
「あのね、リュージ、聞いて。本当に、あたし、話してただけなの。」
「へーえ、なんの話?」
「リュージが、あたしのこと、本当に好きかどうか自信がないって。」
「何言ってんの、おまえ。」
「あたしがあんまり好き好き言うから、仕方なくつきあってんじゃないかって。ホントはまだ、リホちゃんのことが好きなんじゃないかって。」
「はあ?」
「ごめん、あたし、本当に自信なくて、でも、リュージにこんなこと思ってるなんて知られたくなかったから、言い出せなかったの。」
目をギュッと瞑って俯く。
ちょっと泣いてるように見えるように。
騙されて、リュージ。
お願い。
「そしたら、ヨッシーが、リュージ、あたしのこと好きだって言ってたって言ってくれて……」
誰も何にも言ってくれないので、
恐る恐る顔を上げると、
「おまえ、何でバラすんだよ!」って顔を真っ赤にしたリュージが目に入った。
「いや~、イチムラがさ、あんまり悩んでるからさ、つい。」
ヨッシーがにやにや笑いながら、こっちを振り向き、そう言った。
何?この円満解決。
「じゃ、ちゃんと二人で話し合えよ。」
ヨッシーは、あたしの肩にがしっと手を置き、
あたしにしか聞こえない声で、
がんばれよ。
と言った。
がんばるのはあんたよ、と言い返すことも出来ずに、
その後姿を見送る。
「……なに、おまえ、そんなことで悩んでたの?」
ヨッシーが行ってしまうのを待ってから、
リュージがそう言った。
いえ、口からでまかせですけど。
よく切り抜けられたと自分でも感心するくらいに。
「ごめんね、今日、リホちゃんがライブに来るって言うから、急に不安になって……。」
「バカだな。今日は、おまえのためにギター弾くって言っただろ。」
そんなウソにまんまと嵌る、
このバカ男を、
あたしは、
なんとも思わない、はずなのに。
リュージがあたしを抱きしめる。
そっと、
まるでこわれものでも扱うように。
あたしの肩までの髪を優しく撫でる。
ウソだと知ったら、
この男はあたしを、どうするんだろう。