小説~ONESTAR番外編~
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「別れてから周りが煩くていい加減うんざりだけど、
未練はないわね。」
あっさりとリホちゃんが言った。
そりゃ、そうでしょ。
あたしがリュージのことをなんとも思ってないのと同じで、
ヨッシーのこと、
なんとも思ってなかったんだから。
「ねえ、一緒に行って、リホちゃん。
あたし本当にどうしようかって思ってて……
実は、リュージがさ、
あたしに最前列のチケット渡して来て困ってたんだ。」
助けて、リホちゃん、お願い。
そんな感じ出てるかな?
「……リュージが?」
ちょっとだけ、
ほんのちょっとリホちゃんの声音が変わる。
あたしじゃないと気づかないくらい、
ほんのちょっと。
「そうなの。明日、あたしの為に
ギター弾くって言って……。
どうしよう、あたし、そう言うの慣れてないから、
後ろの方からこっそり見たかったのに……。」
相談してるフリをして、
伝えるべき情報はきっちりと挟み込む。
「だってライブって、
ヨッシーのファンでいっぱいだって聞くし……。
ヨッシーのバンドのギターって事でリュージ
、注目集めてんのに、
あたしみたいのが彼女ってなんか悪くって……。」
そんなことないよって、
リホちゃんは言うと思う?
「あたしがリホちゃんくらいきれいだったら、
堂々と見に行くのに……。」
さあ、どう出る?
リホちゃんの言葉を待つ間に唇を舐める。
さっき、リュージとキスした唇。
嘘つきな唇。
「そんなの関係ないじゃん。」
「え?」
「リュージが選んだのはリョウちゃんなんだから。
堂々と見に行けばいいじゃん。」
そうね。
そう言うと思ってた。
リホちゃんには、
一生、
あたしのコンプレックスが分からない。
「一緒に行って、リホちゃん。」
きれいなリホちゃん。
あたしが欲しい物、
すべてを持ってるリホちゃん。
ゆるくウェーブした長い髪も、
二重の大きな瞳も、
白い肌も、
どんなにあたしが努力したって手に入らない。
だけど、
「うん。わかった。」
「ありがとう!リホちゃん。」
リュージは手に入った。
リホちゃんが好きな、
リュージは。
待ち合わせる場所と時間を決めて電話を切る。
部屋を片付けなきゃいけないのに、
力が入らない。
リホちゃんが好きだ。
誰よりきれいなリホちゃんが好きだ。
憧れなんだと思いたかった。
きれいなリホちゃんに憧れてる女の子はいっぱいいる。
でも、
そうじゃないみたい。
そうじゃないのに、
あたしは、今、
リホちゃんの好きな男とつきあってて、
そうして、
リホちゃんに知らん顔で
残酷なことを言う。
おまえの好きな男に、
愛されているのだと、
自慢する。
どうにかなりそうだ。
リホちゃんを傷つける自分が、
最低だと分かってて、
それでも降りられない、
この舞台から。
おおっと、すいません、ストックなくなりました。
明日は、取って出しです(^o^;)ってか、明日の昼休みはCD買いに行かなきゃ!!