小説~ONESTAR番外編1~
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「……おまえさ、俺のこと、好きなんだよな?」
バカ男が妙に真面目な顔をして聞いてきた。
んなわけないじゃん。と心の中で思いながら、
「決まってるでしょ。」と答える。
嘘じゃないぞ、と思ってたら、
いきなりその真面目な顔が近付いた。
あたしの唇に、バカ男の唇が触れる。
げ。
今あたし、キスされた?
「明日のライブは、俺、おまえの為に頑張るから。」
真顔でそんなセリフを言われ、
えええっ?!
あんなに練習したの、あたしの為?
って顔を押し隠すのに必死になる。
「う、うん。がんばって。」
にっこり、笑ってみる。
好きでもないこの男とつきあって、
2ヶ月にもなる。
リュージは、あたしが心の中でバカ男と呼んでるのも知らずに
あたしは、リュージのことを
好きで好きでしょうがないんだと信じてる。
あたしの演技力もたいしたもんだ。
バカ男は、ふんと横を向く。
しまった、ありがとう、が先だったかしら。
それとも、
嬉しいとか何とか言うべきだった?
リュージがギター持ってあたしんち来た時から、
おかしいなとは思ってたんだけど。
だって、明日のライブの練習なら
自分の部屋でやりゃいい話だし。
「新曲のさ、サビのちょっと前、ギターソロなんだ。」
「そう。」
新曲?
ああ、あのバラードか。
「そこだけ、ちょっとテンポを上げてあるからけっこう早弾きでさ、まだたまに指がついていけなかったりしてさ、」
「リュージ練習してたじゃん。」
本当に、練習してた。
こっちが辟易するくらい。
練習してる本人は気づいてないだろうけど、
向かいの部屋から漏れ聞こえてくる同じフレーズを、
何度も何度も何度も繰り返されて、
イライラしたくらいだ。
「大丈夫だよ。リュージなら。明日、頑張って。」
「おお。」
あたしとしては、
これで会話は終わり。
そろそろ帰ってよ。
くらいのニュアンスをこめたつもりだったのに、
バカ男には全然伝わらなかったらしく、
上機嫌でもう一度ギターを持たれてしまった。
おいおいおいおい。
まだ弾く気?
もういいじゃん。
「あたし、明日恥ずかしいから後ろの方にいるね。」
「え?最前来ないの?」
行くわけないじゃん。
「最前列はヨッシーのファンクラブで埋まってるよ。」
「それが明日、最前列のどまん中は、空いてんだよ。」
「何で?」
「そのヨッシーがさ、キープしたんだよ。」
「へ?」
「最前列のど真ん中。」
ヨッシー何する気?まさかとうとう?!
小説~ONESTAR番外編2~東京タワーからダイビング告白 に続く