小説~ONESTAR28~ONESTAR | COCONUT☆HEADBUTT!!

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小説~ONESTAR~


「あの!すいません!!


俺の声を聞き、振り向いた女の人は俺のおふくろよりもちょっと上くらいの年で、

ああ、でもこんくらいの年のおばさんっていくつかなんて全然わかんないんだけど、

思った通り、店長ととても良く似ていた。



「あの、ササキさんですよね?

「ええ?」


戸惑った笑顔をつくるその口元が、薄い皮膚の感じが、目元が、

明らかに店長との血の絆を物語ってる。

この人は、店長の母親だ。


「あの、俺、店長さんに勉強教えてもらってるヤマザキと言います。」

「ああ、あなたなのね、参考書を……」

「ええ、有難うございました。」

「今日は?ナツキ君とお墓参り?」

明らかに「どうして?」と言うニュアンスを含ませて店長の母親が聞く。

そりゃそうだろう。

俺は店長の兄貴とは面識もないんだから。

「ナツキさんに無理矢理ついて来たんです。あの、お参りしないんですか?」

何度も菊の花束を持ち直す店長の母親に笑顔で聞いてやる。

何だって帰ろうとなんてするんだ?

「ああ、ナツキくんが、タカシと話があるみたいだから。邪魔しちゃ悪いかしらと思って。あなたは?」

んじゃあ、ナツキはあれでやっぱり話をしてるつもりなのか?

墓石と?!

「あ、あの、俺は、線香とか買って来ようと思って。」

「あら、タカシとは?」

「あ、いえ、全然知らないんですけど、でも。」

「じゃあ、気にしないで。そうそうカズシはちゃんと教えられてるかしら。」


母親の、笑顔。

柔らかで優しそうな店長と同じ笑顔。


「参考書とか、まだあるのよ。良かったら使ってちょうだい。今晩カズシに電話しておくわ。」


いい人なんだろう、この人は。

きっと。

だって店長の母親なんだから。

あの人を育てた人なんだから。

なのに、

どうしてこの人は。


「あの。」

「はい?

「聞いていいですか?」

「何を?」

「そんなにタカシが大事だったんですか?」

「え?」

「タカシと店長と、どっちもあんたの息子なのに。」


そんなに似てるのに。

他人の俺が見て、一目でわかるくらい、血を分けた親子なのに。



「どうして店長に、サッカーさせてあげなかったんですか?」


菊の花を抱きしめて、店長の母親は俺を見つめる。

どうして俺がそんなことを知っているのか、どうして高校生の俺にそんなことを言われなくちゃならないのか、そんな疑問が入り混じった顔で。


「知らなかったわけないですよね?」

「……知らなかったわ。監督さんがうちに来るまで。どうしてもカズシをサッカーチームに入れたいって。大変な才能だっておっしゃるまではね。」

「だったらどうして!

怒鳴ってからしまった、と思った。

見ず知らずの高校生に言われることじゃないだろ。

激高してる俺を見つめたまま、店長の母親は言う。


「カズシが気づかれないようにふるまってたからよ。」

「それは……!!」

ナイショでサッカーチームに入ってたんだ。

店長の科白がよみがえる。

監督がナイショにしておいてやるからって。

それは、店長の優しさ。

走ることも出来ない自分の兄の為に、自分を犠牲にし続けた優しさ。

だけど、

どうして!!


あんたは気づかなくちゃいけなかったんだよ。

だって、あんたはあの人の母親じゃないか。


心の中で叫ぶ。

言っちゃいけない。

店長が隠して来たこと。

赤の他人の俺が、言っていいことじゃない。


「……私は……タカシが家を出て……もう終わったと思っていたの……。あの子が、会社を辞めてイタリア料理店の店長になるなんて無茶をするまで、まだ我慢してたなんて……本当に……気づかなかったの……。ナツキ君に出会わなければ、きっとあの子は今でも、いい子を演じていたんでしょうね。タカシが死んだ今でも…………。」


小刻みに揺れる花束。

諦めてたはずなのに、今、こんなに楽しいと泣いた店長。


騙され続けてきたこの人と、

店長とでは、

どっちが辛かった、かな。


「だから私、ナツキ君には頭が上がらないのよ。」



泣き笑いのように顔を歪め、店長の母親は墓の前に座り込んでいるであろうナツキの方へと視線を移す。

「ナツキ君だけが、母親の私にも出来なかった事をしてくれるの。カズシを救ってくれるのよ。」


俺を救えるのが、

ねーちゃんだけのように?

ナツキ、おまえは、店長を救えるのか?


ONESTARだ。



店長にとって、

この広大な世界で唯一、光を放つ存在。

それがおまえなのか、ナツキ。


「これ……タカシに。私はまた、今度来るわ。」

「でも……」

「……さようなら。」

店長の母親は、俺に聞くの花束を渡し、

水の入った桶を持って帰って行った。

俺はしゃがみこんでいたナツキの所まで戻り、

花束を花立に差し込んだ。


「何?買ったの?」

「ううん。もらった。」

「誰に?」

「店長のおかーさん。」

「え?!」

慌ててナツキは立ち上がったが、店長の母親の姿がもうどこにもなかった。

「邪魔しちゃ悪いから帰るって。」

「何か言ってた?」

「何かって?」

「こないだここで会った時、この炎天下に帽子を被らずに外に出るなって怒られてさ、日射病になるからって。」


は。

自分の息子を救う唯一の存在に、

そんな説教をするのか?

おまえだけがカズシを救えるのって言ってたなんで、

絶対言ってやんないもんね。


小説~ONESTAR29~ハッピーエンドになる方法 に続くあひる


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