前回の続きです。

原油価格というのは、まず足下の需給環境、そして2~3年先の需給環境、それから地政学的リスク、おおむねこの三つで値段が形成されます。

足下は現時点では足りている。OPECもそう言ってます。投機マネーや製油所の能力不足のせいにしている。これが今だとだいたい50~60ドルくらいが下値の限界となっています。

近い将来の需給バランスに不安があったりすると、投機マネーが流れて来て、10ドル~20ドルくらい上乗せされます。地政学リスクが絡むと、更に10~20ドル上乗せされるというわけです。二度のオイルショック、湾岸戦争などがそうです。現在はイラク戦争、そしてその泥沼化、そしてイランに対する憶測、09年までに、イランが核を持つのは間違いないので、その前に叩かなきゃいかんと、ブッシュはほざいています。空爆から大規模な作戦行動、最悪ホルムズ海峡封鎖なんて話まである。今、アメリカの大統領選が話題になっていますが、とりあえず中東政策に関しては、誰がなっても変わらないと見ておく方が現実的です。

話を戻します。ようするに、ナイジェリアでの民族紛争であるとか、チャベス大統領が煽ったりするのもようは同じ事です。

そして、足下の需給環境のバランスも危うくなるのではないか?という危機が出て来ています。投資しようにもコストの問題がまずあって、人材がいないという問題もある。90年代の価格低迷の時期にリストラしてしまっているので、新しい人材が育つのに10年くらいかかるなんて見方もあります。投機マネーによる一過性の値動きだという話にオチてしまいがちなので、開発投資や技術者の育成という方向性にはダイレクトでつながらない。

そもそものファンダメンタルズのバランスが壊れているという話になれば、開発投資や人材育成につながりますが、そうなると今度は行き過ぎちゃって、逆に80年代~90年代の繰り返しになってしまうのではないか、という懸念もあるのでしょう。

確かにサブプライム問題後の原油価格の値動きは、当時70ドルくらいだったものが、2ヶ月で20ドルくらい上がったりしたので、この乱高下はマネーゲームであったと見て間違いないでしょう。

なのでマネーゲームじゃないか、バブルではないのか、という風に話がオチてしまうと、本当に足りなくなる可能性もなきにしもあらずです。通常これだけ価格が上がれば、供給が増えて需要が抑制されるという状況になってもおかしくはないのですが、供給のネックが出て来ているので簡単にはいかなくなっている可能性がある。重要なのはそう見えるという事です。

需要が急激に増えたという事と、資源の枯渇、ピークオイルの問題があります。

ピークオイルについては楽観悲観と様々ですが、戦略というのは悲観を前提にしなければ、リスク回避は出来ません。不安に煽られる必要はありませんが、とりあえず過度な楽観は、こんなはずじゃなかった的な、まあこの国がよく陥り易いメンタリティですが。

楽観論、悲観論をわきにおいて、まず大前提として、石油は消えてなくなるわけではなく、人類がすべて滅んでも残っているでしょう。でも掘りやすい、穴をあければ溢れ出すような石油、イージーオイルは減少しているという事です。

イージーオイルの埋蔵量が2兆バレル、残りがBP統計などでは1兆2千億バレル、半分近く使い果たしているというのがコンセンサスです。埋蔵量はずっと増えていません。現在の世界の需要量が、日量8600万バレル、年間310億バレル、全然需要も供給も増えずにこのまま行くとしても、40年くらいで使い果たす事になります。石油の埋蔵量は半分掘ってしまうと、生産が急激に減退して行って、生産レベルを保つのに大変な苦労があります。

そして量が減れば減るほど、スペキュレーションの対象となりますので、当然値段は高騰しますし、残りが少なくなってくれば、産油国が囲ってしまい金で買えなくなったり、それを求めて争いが起こるなんて事もあり得る話です。現時点でも起こっていますし、前大戦でさえ我が国にはそういう要素がありましたから。

だから油田の開発をしなきゃならないわけですが、深海だったり極地だったりしますので莫大なコストかかります。そしてコストをかけてでも開発しなければやがて枯渇するという事です。

それ以外の、業界では非在来型と呼ばれる石油は見つけるのが難しく、掘るのは困難で、エネルギーとして使えるようにするには高いコストがかかります。技術革新は石油掘削に関しては大きな発見も生産技術の向上ももたらしておらず、結局、最新式の掘削技術というのは、単に掘りやすい石油をより素早く掘れるようになったというだけなのかもしれないという事のようです。

何十年もの間、石油会社の重役たちは、三次元探査法や水平堀り、多角抗井竣工、深海操業技術といった石油掘削の技術革新で供給は容易に伸び続けると言っていたのですが、技術革新は急激な減産をもたらしただけで、エネルギー問題に関して楽観的な時代は終わりを向かえた可能性が高いといいます。

楽観論の論点になる部分というのは、非在来型と呼ばれる、オイルサンドやオイルシェールなどの埋蔵量が出て来たりいます。原油が形成されてそれがそっくり液体として残る為には、岩盤の蓋があって特殊な条件で温存されます。それが無い場合はどんどん蒸発していって、最後の石油のコールタールがかちかちになった部分だけが残る。これがオイルサンド、砂の油です。

オイルシェールというのは石油が出来ていく精製途上のもの。こういうものがそれぞれ5兆バレル、合わせて10兆バレルくらいある。だから楽観論も出てくることになります。

これにはコストの問題が重く伸しかかっています。表面の露天掘りのうちはまあいいのですが、段々地下深く掘っていくとなると、天然ガスと膨大な水を使って、高温高圧の200度くらいの蒸気を当て溶かしていくという方法を取らねばなりません。そこから使えない重質油を取り出し、そこに軽油を入れて使えるようにする。これはコストがかかるし、これを使えるようにするためのエネルギーと取り出したエネルギー採算が合うのかという問題がある。

EPR、エネルギー・プロヒット・レシオが1以上であれば問題ないのですが、辻褄が合っているのか?という問題があるわけです。エネルギーを沢山使って、それより少ない量しかエネルギーが採れない可能性もある、これでは話になりません。

10兆バレル残っていたとしても、技術革新が生まれなければ意味がありません。バイオエタノールの問題も、こういう問題を抱えている。それほど得でもないし、効率も良くない、ようするにそれほど温室効果ガスの削減には役立たないのではないかと言う視点です。作る過程でそれなりに温室効果ガスをまき散らしてしまうという事が言われています。

イージーオイルじゃないのを掘るとなると、今の石油採掘の限界コスト、5年前が25ドル程度だったものが、今は45ドル、探鉱コストに15ドル、それに輸送コストや設備コストを上乗せすると70ドルくらいになると言われています。

それに比べて昔からの油田のコストは相変わらず安く、中東などは2ドルとか3ドルという低いレベル、オイルメジャーも30ドルくらいを前提に考えています。だから石油の値段が上がりすぎだという議論が出てくるのですが、でも実際は探鉱するにも金がかかるし、石油があるのがわかって生産活動に入ると、資機材のコストも人件費も上がっているわけなので、イージーオイルじゃない部分を何とかしようと思うと、それくらいの数字になってもおかしくない話です。だから100ドルなんて話が高い高いと言っていられる状況ではなくなる可能性があるわけです。

世界的に見ても石油の供給は危機的な状況を向かえつつある、需要が減る可能性は低い、代替えエネルギーの可能性もありますけれど、石油の供給量はピークアウトして、年々減少していく時代へ突入したと考えられています。肝心なのは実際にどうかではなく、そういう危機があると言われているという事です。

そして資源ナショナリズム的な問題が出てきます。ずっと資源を西側が独占していた。製品価格を引き上げ、資源、食料、人件費などを押さえる事によって、その差で儲けてきた。企業はそうやって成長し、一国の経済、所謂開発経済というのは農業国から工業国に転換して来ました。それが中国などの成長によって、新たな局面を迎えつつあるわけです。

高い原油や資源価格は、今までは西側に搾取されて来たという思いがあるので、出来るだけ資源国で享受していくという動きが強まると、国家管理を強めてくることが要因としてあります。

利権に対する使用料、資源保有国に対するロイヤリティも高まってくるだろうし、いい所は温存して難しい所から開発しようとなると、限界コストも高まってくる、最近は環境問題がうるさくなっているので、現状復帰条項というのが課せられ、掘った所を元に戻して木を植えなければならないなんて事になっているので、更にコストがかかります。今までは関係無しだったのからどんどん変わっているので、いったん値段が上がった状態から下がっていかないメカニズムになっています。

ヘッジファンドなら安ければ買い、高ければ売るという行動なのですが、年金ファンドみたいなのが買い一辺倒で入って来たりするので余計下がりにくい状態になっています。WTIの市場参加者の7%がファンドなので比重としては大きくて無視で来ません。最近はもっと高まっているはずです。

確かにファンドのマネーゲームによって高騰している部分はあるのですが、ファンダメンタルズの部分がもう以前のようにはいかなくなっているのではないかという問題があるわけです。

だからエネルギーの効率的な使用が不可欠になってきます。省エネ、省資源化が重要で、最終的には燃料電池か、水素エネルギーなのか、太陽光なのかわかりませんが、それらが一般化されるまでに結構な年月がかかるわけで、そこに至るまでに何もしないのではリスクが高まってくる事になります。

30年とか50年後にそれらが可能になるとしても、つなぎの時間はどうするのか?という問題がある。この問題は非常に難しいので、あとで詳しく述べますが、その為には省エネ、省資源、代替エネルギーの開発が不可欠で、だから石油の値段が上がるという事は、革新的な技術を生み出すチャンスでもあるわけです。二酸化炭素の問題が騒がれていますが、どの道、二酸化炭素を排出するような化石燃料は使えなくなる可能性が大であるという事。

バイオ燃料、太陽光、風力といろいろありますが、これらは基本的に必ずしも炭化水素、石油、石炭、ガスを置き換えるものではないので、これから需要が伸びていくのは輸送用の燃料、モータリゼーション、これらは石油が圧倒的に有利なので、簡単に置き換えられるものでもないのですが、地産地消、適材適所適時にバイオマス、風が年間通じて7メートル以上の風力を確保出来るのなら、風力発電を導入するとか、組み合わせによって賄うしかない。

大型の発電所で一気に賄うというのではなく、地域地域で組み合わせて行くしかない。その為には分権化して、エネルギーも地方分散型にして、電力会社の影響力も弱めて行くしかない。これは課題を強制的に突き付けられてしまう問題ですので、環境破壊やCO2の問題でここまで蓄積されてしまった現実に悲観的にならざるを得ない部分もありますが、長い目で見れば代替エネルギーに移行するしかないわけで、CO2の排出も、したくても出来ない状況にならざるを得ない、人類のエネルギー効率を上げないとどうにもならない時代が来るという事です。

我が国はエネルギーの9割以上が輸入、石油への依存が8割、そのうち中東が9割、先進国の中でも圧倒的にエネルギーの海外依存度が高い、しかも100ドル時代に突入し、食品などの値段もどんどん上がっている。日本にとっては非常に厳しい時代に突入したわけですが、同時にチャンスでもある、というかチャンスに変えなければどうにもならない状況です。座して死を待つわけにはいかない。もとの石油価格に戻ったりする時代を待っていたり、嘆いていてもしょうがないわけで、対応するしかない。

価格が上がってコストアップというだけだと、部分均衡論的話になってしまいます。あらゆる資源の値段が上がってくるわけで、それも2割3割の上昇ではなく、4倍とか5倍とかの上昇で、ステージが変わる、共通前提が変わる話なので、問題は山積しています。

例え間違っていても共通前提というのは、我々はそこの上にしかアーキテクチャを構築出来ませんので、乗っかっている土台が間違っていても、嘆いても中々変わりません。しかし今はそれが変わっているわけですから、ある意味チャンスと捉えないと、結局現在のような場当たり的な戦略もクソもないアーキテクチャに落ち着いて終わり、という状況になってしまいます。

これは大きなビジネスチャンス、投資の機会でもあるわけで、新しい資源価格のステージ、共通前提に向けて、省エネ省資源、環境対応と、今まで石油の値段が安かったが為に、商業化出来なかったものが商業ベースに乗せる事が出来るようになります。

状況が厳しい国の方が対応せざるを得ないわけで、既得権益などが抵抗していても、抵抗している場合ではなくなる可能性が高い。まだ余裕のある国だと、既得権益の抵抗に抗えないので抜本的な対策がとりにくいという意味では、日本が脆弱であるが故にチャンスでもあるわけです。食料、エネルギー、資源、これらの問題も共通して日本はかなり早い段階で危機にさらされるので、なるべく早く適応しなきゃどうにもならない状況になる。

こういう状況であるのに、まだバカメディアは企業の機嫌取りばかり。企業も逃げ切り野郎が舵を握っているという事もあるし、バカメディアそのものが既得権益の塊みたいな存在なので、相変わらず危機感を見ずにバカな報道やバラエティを繰り返している。

環境問題云々も大切ですが、そこまで行く前にもう大きな危機が顕在化している。どこそこで事故が起こっただの、誰それが殺されただの、ハッキリ言えばそんな問題をファストニュースで延々と報道するのは、ある意味偽装と同じです。もっと全国民にとって切実な問題を巧妙に隠そうとしている。温暖化が大変だ、それじゃ箸をマイ箸ににしようとか、電気は消しましょうとか、無駄だとは言いませんが、そんな所で問題が落ちている場合ではないのです。

例えば排出権取引と言う世界の潮流にアメリカのケツを舐める日本は大きく出遅れている。思考停止バカばかりが舵取り役に多いので戦略的なコミュニケーションもクソもなくなっている。舵取り役にバカが多いし、国に規制などさせたってどうせ出来るわけもないと、みんな思っているので、そりゃ企業だって、本当に逃げ切り野郎もいるのでしょうが、キャップ・アンド・トレードなんて導入したってどうせ国家権力が、権益や利権の為に恣意的な運用をするに決まっていると誰もが思っているので、国になんか任せたってロクな事ないとなってもある意味しょうがない部分もある。

そしてレアメタルの高騰の問題も深刻です。レアメタルは石油のように先物の取引所で取引されているわけではなくて相対で取引するわけですが、(だからファンドが入ってくる余地はまだありません。ただ儲かるとなれば、M&Aでもなんでもやってくるというのはありますが)それでも多くが5倍とか10倍くらい高騰しています。これも需給バランスが崩れている事の現れです。鉄とかエネルギーというのは経済の発展段階によって、先進国が使った時には消費量は多いのですが、所得が伸びてもそれほど需要は伸びません。

今猛烈な発展を遂げている国が増えているので、その段階では所得に比例して伸びて行くのですが、レアメタルの場合は発展途上であろうが、中堅国であろうが、先進国であろうが、テクノロジーの発達によって一斉に需要が伸びて、携帯電話などが急速に普及している。生産の7割から8割は中国に依存しているという構図になっていて、今までは消費国として日本が使ったりしていたわけですが、そもそもレアメタルというのは日本の産業競争力、技術競争力の源泉でした。これが手に入りにくくなっています。中国が使いだして、供給の国家管理を強めていて外に出さなくなっています。

かつては石油も70年代くらいまでは政府公示価格という格好で値段が出されていました。で一部公示価格から外れた部分、どうしても今必要な部分はスポット価格でした。いずれにせよ相対取引だったわけです。ファンドが入る余地はありませんでした。

80年代に価格が高騰から暴落してくると、政府公示価格が通らなくなり、その絶妙なタイミングで、NYMEX(ナイメックス)、ニューヨークの商品取引所がWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)を上場したので、一気に価格のスペキュレーション、投機の場、ヘッジの場、公正な市場価格を提示する機能を発揮しました。出来高がそれに伴って出て来たので、世界の指標価格になってしまったわけです。

WTIが上場した事によって、透明化されたのでよくなった部分はあります。相対でやっていると公正な値段がわからず、取引の数だけ値段が出てくるようになる。それをマーケットに提示される事によって、市場価格が指標価格になる。市場化する事によって、外部から新規のプレーヤーが入ってくる事になるわけですが、これに批判が集中し易いのですが、これは必要悪と言うか必要。善とか悪とかそういう問題ではありません。

例えば石油化学メーカーがあったとして、どんどん規模が拡大して行けば、もしマーケット、先物の取引所がなければ、いつどれくらいの原量を、どれくらいの値段で手当てすればよいのかという事が、どんどんリスクを拡大して行く事になる。

リスクが増えれば増えるほど、危険だという風になり、規模を拡大して行く事が出来にくくなる。世の中には一攫千金リスクをとりたい人もいるし、リスクをヘッジしたいという人もいるので、その出会いの場となるのが先物市場というわけなので、最近の先物市場に対する、マネーゲーム的要素ばかりに吹き上がってけしからんという話、金儲けによって市場が混乱し罪もない民が被害を受けている的な啓蒙は、片側しか見ていない見方で、そのおかげで我々は安定した供給を受けている側面もあるし、経済を拡大して裕福にもなったわけですし、経済がスムーズに回るという恩恵を享受しているわけです。そういったリスクヘッジ等による、スペキレーションも必要であるという事です。

穀物はCME、シカゴのマーカンタイル取引所で取引され、鉄鋼はメーカーと資源国、日本のグループ、ヨーロッパのグループ等それぞれ相対という感じなのですが、そこに中国が入って来ています。昔は日本の製鉄グループでも一億トン、だいたい交渉という感じだったのですがが、中国は今4億トンを超えているので、誰が交渉のペースを握るのかと言うと、中国がまず交渉して、そして値段が決まって、あとは追随せざるを得ない状況になっています。調達せざるを得ない立場に対して売り手市場なので、資源メジャーの方が強いので値段が上がって行ってしまうわけです。

原油とか、金とか、非鉄とかを見て、投機マネーによる上昇だという話にオチてしまいがちですが、鉄やレアメタルのような相対のものも上がっているので、すべてのものが上がっています。石炭とか鉄は実需ベースなので投機マネーが入る余地が基本的にはありません。にもかかわらずそれでも上がっている。海上運賃もそう。穀物なら穀物を運ぶ為の船の値段で、今まではトン当たり20ドルで、過去30年くらい平均で来ていたものが、今は130ドルぐらいにまで跳ね上がっています。これも投機マネーが入る余地がない実需ベースです。

レアメタルは資源ナショナリズムの要素がよくいわれます。特に中国はレアメタルについては今までは生産側で日本なんかに多く出していたのを、自分達で消費するようになったのが大きいわけです。そういう背景があり国家管理を強め、資源ナショナリズムを一気にこの1、2年強化しつつあるという背景は、自分達で使う分を確保しておきたいという思いがあり、国家安全保障の観点から囲い込んでいるという状況になています。

つづく!!