国会の期間延長が決まりました。国家公務員法改正案などの重要法案を通す為にとの事だそうですが、この国の政治システムって、実は国家権力が好き勝手に振る舞えるシステムで、この恐ろしいリヴァイアサンの横暴を食い止めるものは何もないという事を改めて実感しました。
天下り規制法案とか、天下り禁止法案とか、そういった呼び方で、本来の公務員制度改革がなそうとしていた事は、かなり矮小化された形で報じられています。元々のねらいは能力主義、リヴォルヴィング・ドア、官民人材交流などによって、公務員制度を活性化し、多様性を盛り込むという事が眼目であったはずなのですが、そちらの方はあまり注目もされず、実効性がはたしてあるのか疑問もあります。
大きく注目されているのは、天下りを人材バンクに一元化する事によって規制するという事が、実効性があるとかないとかの話にばかりなってしまっています。実際、天下りにフォーカスが当たっている割には、結局毎度の話ですが抜け穴的な部分も見られ、天下り改革を断行した安倍政権という旗印を手に入れる為に、実効性の疑問が残る法案を無理矢理通そうとしているように見えます。
天下りを規制する。これは一見非常に国民の人気を得やすい切り口です。それによって利権を回して来たどす黒い構造があるのも事実なのでしょう。我々の血税を談合や癒着によって垂れ流し続けて来た事によって、現状の手詰まりな状況を作り出し、お先真っ暗感しかありません。
この現状を打開する為には改革は絶対に必要でしょう。しかし現状の改革と威張り散らしてカッコつけている法案は、本当にこの国の将来を思って言っているようにはどう見ても見えません。短期的な彌縫策で改革をしているというイメージを売る為のもののようにどうしても見えてしまいます。
現状のこの国のシステムは完全に官僚におんぶに抱っこで回っています。それによって好き勝手に振る舞っているように見えるのは確かですし、実際そういう面は大いにあると思います。そういう負の側面ばかりに目を向けて、ただ闇雲に国民の人気取りの為、天下りの根絶と言えば人気を獲得出来るのかもしれません。安倍さんは人気が下がっていますが。
しかしこの国は問題は沢山抱えていますが、官僚たちの考えられないくらいの理不尽な長時間労働によって支えられている側面も間違いなくあります。政治家がアホばかりでも、国民がお任せで無責任でいられるのも、優秀な官僚たちのおかげでもあります。もちろんそれによって大きな弊害があるわけですが。
自分の従兄弟に役人をやっているのがいます。朝早くから毎日夜中まで働いています。学生の頃は勉強ばかりしていて、生きていて楽しいのか?と疑問に思いましたが、今の仕事ぶりを見ていても、全く楽しそうには見えません。本人と話しても、全く幸せそうには見えず、国民からは嫌われ、ろくなもんじゃねえなと思ってしまいます。
官僚のシステムというのは真面目に働けば働くほど、仕事はキツくなり、給料はそれに比例しません。不真面目にやっていてもあまり変わらないシステムによって動いています。企業に勤めたり、自らビジネスを立ち上げている人たちからすれば、優秀な頭脳を持っている割には、たいした給料も貰っていません。それでも一握りの懸命になって寝る間も休みも削って馬車馬のように働いている方々が、この国を機能させているとも言えます。政治家がバカで間抜けでも、国民が政治に全く興味がなくお任せでも、何とか国が前に進んでいるのはそういった方々の頑張りによる所もあるのだと思います。この官僚のシステムというのは、やる気を持続して、インセンティブを持って長年努めていく事が出来にくい仕組みを抱えています。勝手に官僚になったんだからそんなの知るかで話は終わりなんですが、そういうシステムを何とかしないで、闇雲に官僚を叩く事だけしても、バカな政治家や、流されやすい国民、それを煽る報道、このプラットフォームではヘタすると改革する前より悲惨な状況になりかねない部分があります。
実際外務官僚なども散々叩かれた為に、どんどん質が劣化していると言います。真面目にやっててヘタ打って叩かれるくらいなら、適当に働いていた方がマシだという風になってしまっているのかもしれません。昔はエリートと言えば大蔵官僚というイメージでしたが、今の財務省はもうそういう感じではなくなっています。役人に問題があるという事は確かにそうだと思いますし、何とかしなければならない所だと思いますが、やり方を間違えると、この国の舵取りが益々混迷を極める可能性があるのです。そこを何とかする為に、真剣に制度設計をしているのだとしても、曖昧な表現が多すぎます。
社保庁の迷走ぶりを見ていますと、誠に腹立たしく、全員首にして刑務所にぶち込め、と怒りたくなって来ますが、実際あの連中が無能でどうにもならないボケだとしても、現状のシステムを考えれば、残念ながら、あの連中にちゃんと仕事させるのが、年金問題を解決する為に一番コストも時間もかからない事も事実でしょう。怒りに任せて首にしても問題はもっとややこしくなります。民間にアウトソーシングすれば、費用や時間を節約出来るかもしれませんが、責任の所在を曖昧にする事になってしまいますから、危険と隣り合わせになってしまいます。まあ社保庁に任せているよりはひょっとするとマシなのかもしれませんが、もう失敗は許されない局面にいますので、社保庁の連中はムカつきますが、彼らに任せるのが最も混乱が少なく、それをきちっと監視していくしか有効な手立てないのだと思います。あくまでもマシというレベルであり、それ以外ろくな方法が見当たらなく、どれも欠陥があるのでしょうがなくというレベルなんですが。
官僚の振る舞いは許せないというのはわかりますが、実際彼らを無力化してしまったら、この国が立ち行かなくなるかもしれない、という側面を無視して、取り返しのつかない状況に陥るのは避けなければなりません。選挙で選ばれているわけでもない官僚が、好き勝手に国の舵取りをしていくなどけしからん。確かにそれはそうです。異論はありません。しかし現状の政治家の絶望的な低レベル、メディアのバカさ加減、大多数の国民は政治などよりハンカチ王子とかその人達にとってそれぞれの関心事があり、政治なんて関係ねえぜと思っている現状です。この状況を何とかする為に必要な事は、天下りをただ叩けばどうにかなる話にも思えません。もちろんそれも必要ですが、天下りを厳しくしているポーズだけで、改革したなどと言わせておいては絶対にろくな事ありません。
そういった制度的な不具合がどうにもならなくなっている状況に風通しをよくする事が、国家公務員法改正案の眼目だったはずです。不真面目な官僚と、真面目な官僚の扱いがたいして変わらないのであれば、真面目にやれと言ったって、そんなインセンティブを持ち続けて仕事が出来るほど、人間は崇高な生き物ではありません。
政治家がポピュリズム的な人気主義に走り、ただ天下りと言う部分にばかりフォーカスを当て、メディアもそれを煽っています。役人の天下りによる談合や癒着などは許せませんが、ただ役人叩きだけをやれば国の舵取りが上手くいくのかと言えば、今のこの国の現状では難しいのもまた事実。実際優秀な人は段々官僚になりたがらない傾向にあるのだそうです。まあそりゃそうですよね、税金ドロボー位にしか国民に思われていませんし、どう考えても役人への風当たりはどんどん強くなっていく事も間違いないでしょうし。
そうすると役人の質が益々劣化し、真面目にインセンティブを持てるような制度も抜け穴だらけですので、いい加減な体質は変わらずという状況は目に見えています。そこで天下りを規制するという目標も結局抜け穴を準備せざるを得ない。役人にただ厳しくすれば人気は取れるが、実際に厳しくしすぎると舵取りが上手くいかなくなるので、厳しくした振りをする。それが現在の天下り禁止法案なるものの正体のように見えます。ようするに何も変わらない。そういう事なのではないかと思ってしまいます。本当に改革をしようとしているのだとして、曖昧な部分を残し、裁量と権限を手放さない理由が他に何かあるのでしょうか。合理的な理由があるとすれば、改革したという旗を立てる為にしている事で、ようは現状維持、先送りという感じに見えてしまいます。例えばそうでないのだとしたら、なぜこのタイミングで参院選をずらしてまで通そうとするのでしょう。
公務員制度の改革は必要です。天下りなどによる税金の無駄遣いのスキームは改めさせねばなりません。しかし官僚制度を機能的に動かす為には、それだけではダメです。役人の責任感なるものに頼っていたのでは、どうしたって腐敗します。真面目にインセンティブを持てる制度作りが必要なんだろうと思います。それをやらずにただ叩くだけでは、益々インチキをするインセンティブが増えるだけです。罰則による取り締まりも重要ですが、風通しのいいシステムの構築が何より必要なのではないかと思います。
この国の制度的な欠陥を改革するという事は是非ともやってもらわねばどうしようもない状況だと思うのですが、どうも現状の改革なるものは怪しく感じてしまいます。我々はそれを冷静に見ていく必要があるのではないかと思うわけであります。
そしてどのような改革を遂げたとしても、必ず完璧なシステムにはなりません。不完全で不確実なものしか絶対に構築出来ないのです。それがこの世の法則です。そういう世界に我々は生きているという事も忘れてはならないと思います。問題点が出て来る事は避けられませんので、だからダメだと吹き上がる事なく、だから改革なんて無駄なんだと諦めるわけでもなく、向き合っていく事でしか前に進めないという現実を受け入れ、簡単な打開策はないと知るべきかもしれません。
今度の参院選はどう考えても、与党にとって逆風です。これで国民が目覚めて、投票行動によって政治に関心を持たねば、やっぱりマズいんじゃないのという風になれば、ある意味、安倍さんの功績は大きいかもしれません。目先の短期的な彌縫策に流されず、投票によってきちんとダメなものはダメと突き付ける、お任せでは同じ事を繰り返すだけだと言う事を国民が学び、成熟した社会を築いていく事が何よりの改革になるのではないかと思います。