旅の余韻が抜けません。昨日は爆睡ぶちかましましたのですが、頭の中の旅モードから日常モードへの切り替えは、もう少し時間がかかりそうです。車で旅をするべきか、それとも電車で旅をするべきか、今回は前者で行ったのですが、両者とも一長一短あり、疲労のない旅をする為には、それなりの時間と金が必要なようです。どちらも自由に出来る、収入と仕事を手にしている方は別ですが、どちらもたいして余裕のない自分のような人間は、体力を使って楽しむしかないのかもしれませんね。楽しむには、体力勝負。しかし世の中にはお金も時間も自由になる、一般人からすれば羨ましい環境を手にした方であるにもかかわらず、あえて苦痛や困難、生と死と隣り合わせの状況に身を置く冒険野郎が存在します。そういう方々の中でも、自分が最も尊敬する中の一人が、ジム・ロジャーズさんです。この方の洞察力、博学、ユーモアのある言い回し、単なるヒューマニズム的なものではない、世界への優しい目線、男として格好良すぎです。
冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 日経ビジネス人文庫/ジム・ロジャーズ

¥800
Amazon.co.jp
この本を読んだそもそものきっかけは、確か村上龍さんのJMMだったと記憶していますが、寄稿家の方々が経済を学ぶ為の推薦図書を紹介されている回だったと思います。定かではありませんが、その時、訳者でもある林康史さんが「ナニワ金融道」とともに勧めていらっしゃったのが、脳裏に焼き付いていて、後日読んだのが最初だったのではないかと思います。もともと小説家、村上龍のファンとしてJMMを読んでいましたので、当時の自分には難しい経済の問題は、チンプンカンプンで龍さんどこに行っちゃうの、なんて思いながら必死についていこうとしていましたから、他の方々がおススメになられていた本より、どこか、ああこれなら自分にも理解出来るかもしれないと思って読んだのがきっかけだったと思います。ジム・ロジャーズさんの本は他にもありますが、初めて読んだこの本のインパクトは凄まじく、面白すぎました。この本のおかげで、経済の事を学ぶ楽しさを教えられた気がしました。勉強も楽しさがわかると苦痛ではなくなります。経済の事は難しく今でもわからない事だらけですが、この本のおかげで、そのわからないものに向き合う、向き合い方が学べたような気がしました。アホのように繰り返し読んだ記憶があります。今回旅をしてヘロヘロになって帰って来て、何をテーマにブログを書こうか思っている時に真っ先に頭に浮かんだのが、ジム・ロジャーズさんの著書でした。とりあえず今回はその最初の衝撃を与えてくれたこの本について書こうと思います。他の本はまた別の機会にという事で。
ジム・ロジャーズさんの目線はシンプルです。投資家としての売りか、買いか、需給バランスを的確に判断して、目の覚めるような明快さで世界を切り取っていきます。普段我々が右往左往させられる、テクニカルなもの、政治、法律、思想信条、企業の競争、個人の感情、そういうものに惑わされず、ファンダメンタルズを重視した観点から、シンプルに本質をついていきます。あらゆる土地土地の地理、歴史、政治、経済、宗教、言語、知らない事がないんじゃないか、と思ってしまうほどの知識。その神髄はひたすらハードワークだといいます。彼のように成功するには近道はありません。ひたすら努力、ひたすら勉強なのでしょう。日本にも彼のようにカッコいい投資家や、専門家、知識人、どうしてそんなに何でも知ってるのか不思議に思う、魅力的な方はたくさんいますし、多くがユーモアのセンスもあったりして、素晴らしい著書はたくさん存在します。しかしそれらの方々とジム・ロジャーズさんが決定的に違うのは、ジム・ロジャーズさんはアクティブな冒険野郎という事です。これはそう簡単に真似出来ません。世界中のあらゆる所に自分の足で赴き、自分の目でその国の事情を的確に判断し、まるであらかじめ答えを知っているかのように、読んでいるものを納得させてくれます。知識の豊富さや、ユーモアのセンスにももちろん憧れますが、男としては何より、冒険という言葉に胸がワクワクしてしまいます。格好良すぎです。
彼のように成功を収めていて、お金にも時間にも困らない環境にありながら、なぜ冒険などという無謀とも思えるような事をするのか、女性には笑われるかもしれませんが、そこにロマンが存在するからなのでしょう。危険や苦痛と隣り合わせでなければ、本当の快楽は得られないのだと思います。それこそが本当の快楽であり楽しさなのではないでしょうか。安全な所でちまちまやっていたのでは得られる快楽の大きさも相対的に小さくなってしまいます。死と隣り合わせだからこそ生の実感そのものが快楽に繋がる。自分のように小さな所でちまちまやる事しか出来ない、金や時間や勇気や知識と言ったリソースのない人間には、決して真似出来ない、であるがゆえに憧れる生き様です。たった四日余りの旅でヘロヘロになってしまうようでは、情けない事この上ありません。しかしそういうバイタリティが彼の成功を形作っているのではないでしょうか。
ジム・ロジャーズさんが村上龍さんに言った言葉が印象的で、自分も座右の銘にしようと思うくらい影響を受けました。彼にとってのプライオリティで、死なない事、楽しむ事、世界を知る事、だそうです。危険な旅に身を置いた経験があるからこそ、死なない事の大切さを知っているのでしょうし、生きていなければ楽しむ事も、世界を知る事も出来ません、生きて楽しむ事や学ぶ楽しさ、自分はこの本に出会ったおかげで非常に勉強になりました。
随分前の本なので、現実の世界の流れを見ていると、ジム・ロジャーズさんの洞察力には舌を巻く思いです。この本の中で日本の事が書かれてるくだりがあります、彼はこの国の良き方向と悪い方向の予想をしますが、どうやらこの国は悪い方向へと舵を切っているように見えます。しかし彼は著書の中でも言っています。物事は繰り返す、価格は上昇し、誰もが買いに走り、それが価格の上昇をさらに押し上げ、買いが買いを呼び、誰もが上げ相場を疑わなくなり、永遠の繁栄があると錯覚する、しかし必ずピークを向かえ、やがて価格は下落する、永続すると思った繁栄が幻想である事に気付き、売りが売りを呼び、価格は下落していき、誰もがもう何もかもおしまいだ、ゼロになると狂乱し、今売らないと一文無しになってしまうとなり、価格は絶望的な下落を迎える、しかしそこが買いなんだと。社会が豊かになり、一定の期間威張り散らしたら、やがてピークアウトして終焉を迎える、しかしすべての富が無くなっても生活は続くんだと。そして彼はこうも言っています。夢があるなら実行すべきだと。
歴史は繰り返しです。それは人間がバカだからかもしれませんが、そういう生き物で業なのかもしれません。しかし絶望があるからこそ希望もまた存在するのです。ちょっとくらいの旅でへたっているようでは、楽しむ事などできません。世の中には知らない事や、楽しい事が沢山あるのですから。生きているうちにしかそういうものを感じる事は出来ません。旅をしてくたくたになり、そんな事を考えました。