「ん、学校」

朝目覚めたら体が動かなかった
金縛りとかそんなんじゃなくて
柔らかく暖かな温もり

「優紀…」

幸せそうに眠る姿
この顔を毎日見ていたい
そばにいて欲しい

そっと触れると
目が開いた
そして目を下げて
私の好きな笑い方
手を伸ばし私の後ろ頭を持って
キスしてくれた

「おはよ」

「おはよ」

「学校は?」

「職員会議だから早く行かなきゃ」

「彩」

「ん?」

「俺は…そばにいるから」

「…うん」



(山本先生飲み会行きましょ)
(久しぶりに、ね?)

「ごめんなさい、ちょっと」

(いいじゃないですか
恋人いないんやし)
(ちょっとセクハラになりますよ)
(いや、だって…)

「恋人…いるので
ごめんなさい」

(えぇぇぇ!?!?!?)

「…失礼します」



「なにー?交際宣言?」

「別にほんまの事やし」

「昨日はどうでしたー?イデッ」

「ニヤニヤするな
別に、普通っ」

「とか言って顔赤いでー?
彩も子供みたいなところあるんやなー」

「うるさい」

「渡辺くん今日
幸せです!って顔して歩いてたわ」

「なにそれ
普通の顔してるやろ」

「んーん
幸せな僕を見て!って感じやった」

「…」

「フフフッよかったな?」

「別に…」

「もぉー素直にならへんなー」


ガラガラッ
「はい授業をはじめ…あ」


(王子っデートしよ?)
(なぁーいいでしょー!?)
(あの子誕生日やねんでー?)

「わかったわかった」

(やったー!だいすきっ)

「ちょ、ちょっと」

高校生のじゃれ合い
彼がモテるのは重々承知だから
別にいい
彼は私に夢中だから
私以外見えないはずだから

「こらー!授業」

何もなかったかのように
声を大きくすると女子達は
急いで席に戻る
ちらりと優紀を見ると何もなかったかのように
教科書を準備している
少し、慌ててほしかったな…

ガラガラッ
「彩っ」

「ん」

優紀は昼休みこっそり抜けて
準備室に来る
今日もいつもと変わらず
いつもなら何も思わないのに
腹が立つ
優紀が連れてくる女物の香水の匂い


「彩、午後何組の授業」

「2と3」

「あーまじか厳しめにいかんとあかんな」

優紀は何も気づかない
私が今吐きそうなくらい気持ち悪いこと
心に出来たもやもやのせいで
気分が悪い

「彩?」

「なに」

「なんか怒ってんの?」

「別に」

「怒ってるやん」

「…」

「…俺、ちょっと用事あって
帰るの遅いからさ先に」

なんで言うてくれやんの?
女友達と遊ぶって
あの子達デートやって言うてた
誕生日なんかただの口実やのに

「あっそ、好きにすれば」

「彩」

「クラスの女の子達と遊ぶんやろ
最初から言えばええやん
何ちょっと隠してんのダッサ」

「なんやねん急に
別に隠してるつもりじゃ」

「…」

「彩」

優紀は近づく
その時見えた優紀の
腕あたりに着いたグロス
きっと女子が腕に抱きついた
その時についたんや

「いやっ!触らんとって!」

「…っ」

優紀は悲しそうな顔をする
やってしまった…それはわかってる
でも耐えれない
知らない女を触った手で
私に触れることが
気持ちがなくても嫌なんだ
今日の朝みたいに何も身にまとわず
私だけを愛おしそうに見てほしい
優しい顔で笑ってほしい
こんな顔にさせたいわけじゃない…

「授業の準備あるから!」

「彩っ…」

私は逃げ出した
優紀を傷つけたまま
逃げ出したんだ