「あー!!!くそっ!」

(王子どうしたん?)
(機嫌悪いん??)

「あ、いや
ハハッそんなことない
ちょっとなんだろ
叫びたい気分やってんっ!」

(えー変なのー)
(フフッ)

「ハハッ…僕帰るわー」

家に戻ると母親がいた

「優紀おかえり」

「…」

「…はぁ」

「あのさ」

「え?」

「俺、家出るから」

「え?なんで、出るってなにを…」

「金ずっと貯めてたから
バイトも増やしたし
もう出る用意もできてる」

「何を勝手に
アンタは未成年やし
そんな勝手な…」

「その方がアンタも嬉しいやろ」

「…なにを」

「俺のこと
もういらんやろ?親父とも別れたし
俺が出来損ないやからさ」

「優紀…違う
確かにお母さん
あの時ひどいことを
でも、あれは…」

「本心なんやろ
ええよもう
別に恨んでる訳でもない
俺も大人になったんかな
好きになったらどーしても手に入れたい
そんな気持ちあるって分かったから」

「優紀…?」

「俺な母さんのこと
嫌いやって思ってたけど
でも今はそんなことないから
ただこのままの自分が許されへん
だから出ていく」

「…」

「ごめんな最後まで
ダメな息子で」

「ダメなんかとちゃうっ…
優紀はいつだって
誰かのために…」

「ありがと母さん
じゃあな」

部屋は決めていた
荷物も動かしていた
ちゃんと母さんとも話せたし
少しはスッキリ出来た
大人になりたい
そう強く想い始めたのは
彼女と出会ってから
自分でも分からんくらい必死
こんな必死になることが彼女には
子供にしか見えへん

昨日見たあの光景は忘れられない
彼女の腰に回された手は
拒否られることがなく
会計を二人分置き
タクシーを拾う姿が大人で
お酒を普通に飲む姿は遠く感じた
俺はそんなことできない
女に困ったことは無かった
笑顔を振りまけば自然と寄ってきて
王子と呼び酔いしれる
簡単だと思ってた
でもそんな俺の姿は恥ずかしくなるほど
子供やった

「釣り合う人間になりたい
彩が必死になってくれるくらい
大人になりたい
彩に愛される人になりたい…」



(渡辺くんも行くー?)

「え?」

(大人っぽいしバレへんやろー?)

「なんですか?」

(バイトでの飲み会
オールで遊ぶねん
行こや)

こんなこと言われたのは何回もある
でもなんかあったら面倒やし
そもそも興味がなかった
でも今の俺にはそれはまるで
大人に近づくための近道のように感じた

「行きます」

早く大人になる
それしか俺の頭にない