出会いは最悪だったかもしれない
商談で彼女の会社に行った時に
俺は緊張で焦ってお茶を彼女へこぼした
しばらくの間彼女は俺を睨んでいた
しかし通ううちに彼女は少しずつ
俺と話してくれるようになった
そして気づいたら

「待った?」

「待ってへんよ」

「なぁ彩ちゃん可愛い?」

「うん可愛いっ
ほら、行くで」

美優紀と付き合い始めた
可愛くて綺麗で
仕事が出来て優しい
そんな美優紀に惚れてしまった
かつてこんなにも好きになったこと
あったんやろうか
それくらい彼女に惚れてる

「きれいー」

「やろー」

「さすがに人おらへんね
肌寒いし…」

「よっ、これ着とき」

「ヘヘッありがと」

さすがに9月の海は寒いな
浜辺に座り
波を理由に肩を寄せて
自分との距離をゼロにする

「んー…気持ちいい」

「幸せ…やな」

「うん、すごい幸せ」

「よかった」

「彩ちゃん私
これからも彩ちゃんと幸せがいい」

「…」

「別れへんよ…離れても」

「美優紀」

俺は2年間NYに転勤になった
美優紀を連れていきたいけど
美優紀だって好きな仕事がある
だから少し前別れ話を持ちかけた
寂しい思いをさせる
それに美優紀の周りにはたくさんの出会いがある
美優紀を縛りたくない
彼女は自由に飛び回る姿が似合うから
だから今日は最後の思い出になるかと

「美優紀ええんか?」

「うん、彩ちゃんのこと
好きなままで別れたくないもん
まぁ遠距離の間に嫌いになったら
別れるけど」

「なんやそれ…ホンマに…」

「フフッあれー?泣いてんの?」

「泣いてへんわ
そーや!これ美優紀喜ぶと
思って」

「え?…あ!線香花火」

「してなかったやろ?
まぁまだセーフやろ」

「うん!」


今にも消えそうな花火が
季節の終わりを告げる
来週には向こうに行くから

「綺麗やね」

美優紀は悲しそうに笑う
その姿は綺麗で言葉を失う
離れたくない…

「美優紀…」

「ンッ…彩ちゃん?」

「散歩しよ?」

手を繋ぎ歩く浜辺
この一つ一つがすべて思い出になる
この欠片一つ一つが
俺にとっての最大の幸せになる

ポツポツポツッ

「あ、やべ急ごっ」

一瞬繋い手が強く握られた
「まだ帰りたくない」
その言葉を消してしまう

車に戻ると
帰り道のナビをセットして
シートベルトを締める
学生なら何も考えず美優紀を連れ出せた
でも俺らは立派な社会人
そんな無責任なことできない
大人なんかならんかったらよかったな

「彩ちゃん」

「ん?」

「さっきの嘘やで」

「え?」

「彩ちゃんのこと
嫌いになんか…ならへんよ
ずっとずっと好きやもん
初めてなんやもん
彩ちゃんとの将来だけ
ちゃんと見えるもん」

「…」

「ちゃんと帰ってきて」

キィィ…

車を路肩に寄せて
シートベルトを外して
美優紀を抱きしめる

「当たり前や
必ず帰ってくる
そのときはずっと一緒におろう」

「彩ちゃん…」

「美優紀との日々は
ホンマにすぐ思い出せる
それだけ輝いてんのかな
その一つ一つがなホンマに大切や
今やってこの一瞬も大切やから」

「フフッ彩ちゃん
カッコつけや」

「うるさいなぁ」

「ホンマに私のこと好きやなー」

「そんなんとちゃう」

「えー」

「あい、してんで」

「えっ」

「はい、運転再開」

「照れてるーっ
…うん、彩ちゃん」

チュッ

「愛してるよ私も」

「おぅ///」

「あー、幸せー!」

「俺も幸せや」