山本はまっすぐこっちを見て
歩いてくる
呼んだのは自分やけど
怖くなった
すると山本は歩みを止めて
薄い電気をつけた
「山本...?」
「俺やで...?」
そう言うと優しく微笑んでくれた
初めて見た優しい顔
今までしてた緊張が
一気に解ける
我慢してた何かが吹き出した
「ッグ...ッグ
怖っ、かった」
「うん」
「誰も、いなくって」
「うん」
「初めて、好きにっ
なれたと思って!」
「うん」
「でも、山本の、言う通り...で」
「うん」
「汚いっ、汚い...汚い」
「ふぅ」
ギシッ
山本はベットに
私に背中を向けて腰掛ける
「これからお前のことを
何も知らんやつが
お前のこと汚いとか言うかもしれん」
「うんっ」
「でも何も知らんやつが
いう言葉なんか信じるな
ただの戯言でしかないやろ
おれはお前を知ってる
アホなとこも
よーわからんとこで真面目なことも
だから、言うたる
お前は汚くなんかない
被害者や」
山本は一息置いて
振り返って
また微笑んでくれた
「...汚くない」
そう言って頭に手を置いてくれた
体から自分を覆ってた
黒いものが取れた気がする
そしてまた安堵から涙が溢れ
山本の背中に抱きついて
泣きじゃくった
山本はただ黙って
背中を貸してくれた
「渡...」
「スースーッ」
「...重い」
背中にもたれかかったまま
寝られる
横にしようとするけど
手は完璧にお腹の前で組まれてて
離すこともできない
まるで...どこにも行くなって
言われてるみたいや
「ほっとけるわけないやろ」
手をゆっくり離して
体をベットに横にした
顔は涙で濡れてるから
ハンカチで拭くと
くすぐったそうにする
「ホンマにあほやな
勝手に傷ついて
弱いくせに」
「んっ...」
涙がまた零れ落ちた
「...もう泣くな」
「や、まもと...」
「ッ!!」
「...んぅ」
「俺はおるよちゃんと」
手を握って
寝顔に伝えた
ガラッ
「彩?あー...」
「なんやねん」
「いやぁ?若いっていいなぁーって」
「うるせぇ」
「怖いなぁ
好きなんやろ?」
「ちゃうわボケ」
「ふーん」
「ちゃうけど」
「けど?」
「他の奴らとはちゃう...」
「そっ?今はそれでいいんちゃう?」
「おぉ」