...シュッ!!!

「よし!」

「彩!すごいやん
記録超えたで」

「当たり前やろ誰やと思ってんねん」

「ナルシスト...
まぁでも大会記録までは
あとちょっとかぁ」

「まぁな難しいもんや」

「でも彩なら行けるわ」

「さんきゅ」

そんな話をしてたのは
1週間前で
今日はその大事な試合
これに勝てばてっぺんになれる

「彩リラックスやで?」

「分かってる...ふぅ、よし
行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

大会が進んでいき
決勝まで上り詰めた
問題はここからや


「へぇー山本すごいやん」

「でも全然飛んでなくない?
バー上がって行ってるけど...」

「...アイツ」

「え?」

「誰かが失敗するまで待ってるんや
それを越えて勝つ気でおる」

「なにそれ...なんでそんなこと」



最後のひとりが失敗
去年より高くなってる記録
飛べる可能性はものすごく下がった
でも飛び越えてみせる

ダッダッダッ...シュッ!!!

カラーンッ!!

失敗

ダッダッダッ...シュッ!!!

カラーンッ!!

失敗


「ハハッ...やっぱカッコつけすぎたな」

客席を見ると
上西と朱里がこっちを見てる
去年はあそこに美優紀がいた
体調悪いのに応援しに来てくれた
でももういない
何期待して見てるんやろ
美優紀は見てないやんか
私、なんで飛ぶんやろ
美優紀はおらへんのに
もう、飛べなくてもい...



彩ちゃんなら...飛べる



え?





美優紀...?




「あ...」

バーの向こうに
美優紀はいた
幻覚やと思う
でも私には見えるんや
そこに美優紀がいる
出会った時と同じ
優しい笑顔をして
私をまっすぐ見てる



彩ちゃんならとべる




ー私に飛べる?失敗したら



それでも私は飛べると思う


ー美優紀




美優紀はにっこり笑った
そして私もバーに向き合う


助走を二歩前に
顎を引いて真っ直ぐ

「ふぅ...」


ダッダッダッ...シュッ!!!


マットに倒れ込んで
バーを見上げると
大きくしなる
あー無理やったんや
目をつぶったときやった


((うぉぉぉぉぉー!!!))

「え...?」

(やりました山本選手
記録更新!優勝です!
長いブランクがあっても
彼女には関係ないのでしょうか!
こんなこと前代未聞です!!)

「うそ...」

もう1度バーを見ると
美優紀が支えていた





ほら、飛べたでしょ?
彩ちゃんは飛べるねん




ーホンマやな




美優紀に触れようとした
すると姿は消えてしまう







「彩ぁぁぁ!!!」

「うぉ!何やねん山田っ」

「お、おめでとぉぉ」

「ハハッ!!ぐっちゃぐちゃ
ったく、さんきゅ」

「よかったぁ...」

「ありがとな?」

「そーいえば飛んでから
だいぶ寝転んでたけど
どっか痛めたん?」

「...いや、ちゃうよ」

「ん?」

「私の勝利の女神が助けてくれたんや」

「なんやそれっ」