「はぁ…」

私が思ってることは
間違いなんかな
美優紀に生きてほしい
死んでほしくない
そのためには治療を続けることやろ?
だって辞めるっていうのはつまり…

「彩ちゃん」

「え?…美優紀のお母さん」

「久しぶりやね
美優紀がいつも
お世話になってます」

「いえ、それは
私のほうで」

「美優紀から聞いたよ
受け入れてくれたんやろ?
大切な人になってくれたんやって
ホンマにありがとう」

「いえ、私は…
支えてもらってばっかで
ホンマに恥ずかしい限りです」

「…そんなことない
ホンマに感謝してる」

「…」

「彩ちゃん
今、美優紀の今後について
悩んでるんやろ?」

「…はい」

「ふぅ…そっか
あのな私は



治療辞めてもらおうと思ってる」

「え?なんで…」

「多分あの子も
ホンマはそうしたいんちゃうかな
全部我慢してるから」

「治療を辞めるってことは」

「そうやね
死を待つことかもしれへん
それは嫌や
でも、私は
美優紀の笑顔みたいんや
治療を続けても効果はないし
どんどん辛そうな顔になっていく美優紀を
親として
もう、見たくないんや」

「…」

「美優紀は小さいころに
癌になって
それで入院して
完治した
20になるまでに
再発しなかったらって
言われて
ずっと過ごしてきた
高校やって
必死に勉強して努力してたんやで
でも、入学式の直前
突然倒れて
再発してた」

「…」

「やっと笑顔が戻ったのに
やっと普通に過ごせるのに
志望校に受かった
幸せに満ちてたのに
この時ほど神様恨んだことなかったなぁ」

「…」

「入試の時にな
美優紀、彩ちゃんが
絡まれてる子助けたの見てたらしいんよ
帰ってきて喜んで言ってた
「ママあそこの学校にはヒーローがいるんやで!」
って…
そこから彩ちゃんのこと調べてた
話したことないのに
彩ちゃんの話ばっかりやった
ホンマに毎日笑ってたんや」

「美優紀…」

「再発を受けてから
美優紀笑わなくなって
せっかく入学したのに
全然嬉しそうじゃなかった
でもな、彩ちゃんと出会って
彩ちゃんとかかわって
あの子また笑い始めてん
嬉しかったぁ…
笑顔が見れて」

「私やって美優紀の笑顔に
救われました
笑顔を見ていたい
でも…」

「彩ちゃんありがとう」

「え?」

「美優紀のこと想ってくれて
でもなもう私も準備はできた…」

「準備…」

「彩ちゃんお願いします

美優紀を笑顔にしてください
最期の時間
あの子にとって幸せなものにしたい
これ以上あの子を頑張らせたくない
親として、ひどいかもしれない
死を認めることかもしれない
でも親としてっ…
あの子に出来る最後のことなの」

涙をこぼしながら
頭を下げる美優紀のお母さん
私は最低やな
お母さんの方が私の何倍も辛い
ずっとずっと美優紀を見てきて
過ごしてきた
そんな人にここまで頭を下げさせてる
こんな会って数か月の人間が

「頭あげてください」

「っ…ごめんなさい
こんなことしちゃって
あぁ…美優紀に怒られちゃうな
「彩ちゃん困らせへんとって!」
って」

「お母さん」

「ん?…え?」

私は頭を深く下げた

「お願いします
こんなどうしようもない私ですが!
美優紀と最期までいさせてください!
美優紀を幸せにさせてください!」

「っ…っ…」

ガバッ…ギューー

「あり、がとっ
彩ちゃん
ホンマに…ありがとう」



そしてその日から
美優紀の治療は終わった